ツンデレ秘書役で大ブレイク!
貝原役、高橋一生という隠し玉

――実は、そんな主役陣もさることながら、本作は脇を固めた役者さんたちへの評価がすごく高く、中でも、ツンデレな秘書・貝原を演じた高橋一生さんは、テレビ誌が主催するドラマアカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞されるほどブレイクしましたよね。

飯田 「高橋さんは子役からデビューしているし、舞台でも活躍されていて、お芝居がハンパなく上手いんです。だから、こういう掴みどころのない役でも間違いなく演じてくれる確信はありました。貝原は、セリフもそれほど多くないし、わかりやすく面白いことを言うわけでも、するわけでもないのですが、高橋さんが間や表情、セリフの言い回しでコミカルというか、独特の空気感を出して貝原というキャラクターを育ててくださいました。実はここまで貝原の人気に火が付いて驚いているのは高橋さんご自身なんです。スタートした頃は、貝原の少ないセリフで、役柄をどう膨らませたらいいか、戸惑ってたぐらいでしたから(笑)。

 正直、貝原人気は私たちの予想を超えるものでした。ツイッターやインスタグラムも貝原ネタのときは異常な盛り上がりを見せてたんです。

 あと、どうやら一部の方には貝原と翔くんの関係が少し“BL”っぽく見えるようです。そういう意味でもこの2人は人気でしたね。実は、演出の木村ひさしさんがその反応を面白がって、貝原が翔くんを壁ドンするっていうシーンをサービスのつもりで入れたりしてました(笑)」

――『民王』が放送されていた金曜ナイトドラマは『トリック』『特命係長 只野仁』『時効警察』など、過去にもドラマファンが喜ぶ、ある種マニアックなドラマをたくさん輩出してきた枠ですよね。

飯田 「まだまだチャレンジングなことができる枠ではあるんですが、『トリック』や『特命係長』をやっていた頃に比べると『深夜』的なカラーは薄くなってきていると思います。

 夜の11時15分の枠って、昔は『深夜』だったんですね。でも今はもうひとつのプライム枠ともいえるポジションですし、他局も深夜帯ドラマを多く作っていて珍しくはなくなった。昔よりこの枠はメジャー感のある企画が多くなっていると思います。ただ、その中でも実験的なことや挑戦したいことができる、貴重な枠ですね」

――そういった意味では、今回『民王』は、スペシャルドラマ版のみならず、貝原を主役にしたスピンオフドラマにネットドラマの配信、さらにはムック本の発売に至るまで、新しい「テレビドラマ」のビジネスモデルにチャレンジしている印象です。

飯田 「ありがとうございます。もちろん、そのためにはビジネス的にクリアしていかなければいけないハードルがたくさんあります。ありがたいことに今回の『民王』は、たまたまうまくいった稀有なケースです。まず原作者の池井戸先生が、私のあれをやりたい、これをやりたいというわがままに、『好きにやっていいですよ』というスタンスで全部認めてくださったことが一番大きく、キャストの皆さんもそれを面白がってくださった。細かく最初から戦略を立てていたというより、キャストとスタッフでできるだけたくさんの人に面白いと思ってもらえるものを作ろうと頑張っていたら、気がついたらスペシャルドラマにつながり、貝原のスピンオフ、ネットドラマ、ムック本の制作につながっていった、という感じです」

――今回の『民王スペシャル~新たなる陰謀~』(4月15日放送。一部地域を除く)は、まったくのオリジナル脚本になりますが、どんな内容になるんでしょうか?

遠藤憲一、菅田将暉W主演『民王』復活 <br />ツンデレ貝原にも再び会える!『民王スペシャル~新たなる陰謀~』
4月15日(金)午後11時15分~テレビ朝日系(*一部地域を除く)

飯田 「実は原作の中で1つだけやっていなくて気になっていた要素が、『同時多発的に入れ替わりが起こる』っていうものなんです。連ドラの中では武藤総理とその息子、総理の政敵である蔵本とその娘、という2組の入れ替わりを扱いましたが、原作ではもう2組ほど入れ替わっているんですよ。本当は連ドラでやりたかったんですけど、8本の話数では描ききれなかった。だから、スペシャル版ではそれをやろうと脚本の西荻さんと話していて。

 今回は、武藤総理と翔ちゃんの入れ替わり、さらにその入れ替わった翔ちゃん版の総理がまた別の何者かと入れ替わってしまうんです。果たして今度は誰がなんの目的で、入れ替わりを仕組んだのか、行方不明になった翔ちゃんの魂はどこにいるのか、というのがスペシャル版のストーリーです。

 ほかにも国会中継中の大臣たちが一斉に幼稚園児の魂と入れ替わってしまったりもします。3歳の子役たちのオジサン演技と、ベテラン俳優の幼児演技、ともに爆笑請け合いです! 

 あと、私の一押しの見どころは遠藤憲一さんのラップです! 台本を読んだ遠藤さんからは苦渋の表情で『何でもできると思わないでくれ』と言われました(笑)。ご自身的には出来上がりに自信は全くなさそうでした(笑)が、とても味がある仕上がりだと思います」

――確かに、最近はリアルな政治の世界でもまるでコメディのようなことが起こってますよね。

飯田 「実は貝原が主役のネットドラマ『民王 番外編 秘書貝原と6人の怪しい客』のほうも、実際に政治家の秘書さんにお伺いした面白い話がネタになっています。陳情ってご存じですか? 一般の方が公的機関に善処してもらいたいことなどをお願いすることなんですが、議員先生もお忙しく、秘書の方が対応することがあるそうなんですね。で、その陳情というのが、『えっ、そんなことまで来るの?』っていう内容も多いらしくて。選挙区の偉い方の息子が駆け落ちしたから探してほしいとか。取材したらその陳情話が面白かったので、ネットドラマはそれを題材にしようと思ったんです。

 貝原がひょんなことから仕えることになったおバカ議員のもとに寄せられるトンデモ陳情話が、毎回ワンシチュエーションコメディで展開していくという、4コマ漫画に近いものになっています」