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Think Locallyなイノベーションのなかの日本

シリコンバレーで生き抜くために必要なのは圧倒的なスピード感

鈴木智之 [スタンフォード大学US-Asia Technology Management Center客員研究員、三菱総合研究所研究員]
【第2回】 2016年4月15日
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破壊的イノベーションは、既存産業だけでなく、同じくイノベーションに取り組む競合企業をも瞬く間に駆逐していく。いつ自らが駆逐されるかもわからないスタートアップ企業は、他社を追い抜き突き放す、圧倒的なスピードとスケールへの要求にさらされている。イノベーションを志す日本企業が共有すべき、スピードとスケールの感覚とは何か。

イノベーションで成長するスタートアップ企業さえも
新たなイノベーションよって駆逐される

 市場評価額が10億ドル(約1100億円)を超える非上場企業のことを、スタートアップの世界ではユニコーンと呼ぶ。日本国内でも上場後などにそれ以上の市場価値となる企業は数あるが、投資家より数億~数百億円単位で必要な資金を得ることが可能なシリコンバレーのビジネス環境では、上場しなくてもそれだけの価値があると評価される企業が多く生まれている。

 4月のはじめ、企業向けチャットツールを提供するSlackというスタートアップが2億ドル(約220億円)を投資家から追加調達し、ユニコーン(=一角獣)ならぬ四角獣、つまり市場評価額が40億ドル近い会社になったと報じられて話題になった(1)。同社が注目される理由のひとつが、その圧倒的な成長スピードである。

サンフランシスコにあるSlackオフィス

 Slackがサービスを立ち上げた2014年当初、業界は多くの競合がひしめくレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)であった。それが1年足らずで50万人、2016年には300万人に迫る一日のアクティブユーザー数に成長し、有料サービスの利用者も80万ユーザーを超えた。100社以上いたという競合を追い抜き、業界で一人勝ち状態だ。メールなどをはじめとするビジネスのコミュニケーションを革新する存在として、さらなるイノベーションを巻き起こすことが期待されている。

 コンパクト・デジタルカメラがスマートフォンに、タクシーがUber(配車アプリ)に、というように、従来の市場を駆逐してしまう破壊的イノベーションは起こり続ける。だが、イノベーションに駆逐されるのは古くからある産業だけではない。企業向けチャットツールの市場が盛り上がりはじめたのは2012年頃。乱立した競合企業の多くは、それからわずか2~3年のうちに消えてしまった。イノベーションに取り組むプレーヤー自身もまた、圧倒的なスピードで成長する新たな製品やサービスによって駆逐されるリスクに、強くさらされているのである。

 スピードだけではなく、スケールもポイントだ。例えばUberやAirbnb(空き部屋シェアサービス)のようなシェアリングエコノミーは、いまや世界中に展開し各国の既存産業に大きな影響を与える存在となった。しかし、ともにサービス開始はわずか数年前だ。短い期間に、広範囲にビジネスを展開するそのスピードとスケールは、頭でわかったつもりでも、実際に経験しないことには肌感覚として得ることが難しいもののように思う。

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鈴木智之 [スタンフォード大学US-Asia Technology Management Center客員研究員、三菱総合研究所研究員]

スタンフォード大学US-Asia Technology Management Center客員研究員。三菱総合研究所研究員。Kizuna Across Cultures(米国NPO)日本ディレクター。慶応義塾大学理工学研究科修士。新規事業開発/リスクマネジメントのコンサルタントとして、製造、金融、商社、インフラなど幅広い企業を支援。現在は同大学にてスタートアップの成長プロセス、医療・ヘルスケア領域のイノベーションを研究。

 


Think Locallyなイノベーションのなかの日本

シリコンバレーをはじめとする海外からみた日本のイノベーションの課題と方策について、スタンフォード大学での研究活動などを踏まえ論じる。Think Locally, Act Globallyのイノベーションにおいて、外国のローカルのなかで日本はどのような存在なのか。イノベーションを育む多様性と融合のあり方を考察する。

「Think Locallyなイノベーションのなかの日本」

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