2020年の東京五輪が決定してから、はや2年半あまり。決定の瞬間こそ大きな興奮に包まれたものの、その後諸問題が相次いで顕在化したこともあり、足もとでは興奮は薄れつつあるように見える。巷からは「本当に五輪、やるの?」という声すら聞こえてくる。東京五輪の「盛り下がりムード」を食い止めることはできるのか。(取材・文/小川たまか、プレスラボ)
諸問題が続々明るみに
「盛り下がりムード」漂う東京五輪
IOCのジャック・ロゲ会長が手に持ったパネルを裏返し、ひとこと「トーキョー」と言ったあの瞬間の歓喜と熱狂を、覚えている人は少なくないだろう。
2013年9月7日、ブエノスアイレスで行われたIOC総会。東京はイスタンブール、マドリードを抑えて、2020年の第32回夏季オリンピック・パラリンピック開催地に決定した。前回日本で夏季五輪が開催されたのは、1964年の東京大会。実に56年ぶりの開催となる。
2011年の東日本大震災から立ち直り、復興に向けて力強く歩んでいきたいという日本人の心情とマッチしたこともあり、五輪の開催決定は好意的に受け止められた。
しかしその後、状況は暗転してしまった観がある。五輪に関するネガティブな話題が相次いで噴出したためだ。
記憶に新しいのは、新国立競技場の建設費問題と、五輪エンブレムの盗用疑惑に関する一連の騒動だろう。どちらも議論が長引き泥沼化するうちに、国民から「本当に大丈夫なの?」「こんなことならもう、開催しなくてもいいんじゃない……?」という声すら聞かれ始めた。
新国立競技場の当初案をデザインした建築家、ザハ・ハディド氏の死去が3月末に報じられると、氏のこれまでの功績を讃える声とともに、「日本で起きた問題が心労を与えたのではないか」という憶測も飛んだ。新国立競技場については、ザハ氏案が白紙撤回されてからも、新たに決まった競技場のデザインに対して「ザハ氏案と酷似している」という指摘が出たり、競技場内に聖火台を設置する場所がないことが発覚したりと、物議を醸し続けている。
エンブレムについても、再度募集された案に対して前審査員たちが次々と批判を行なった。その他にも、公式に採用されたボランティアスタッフの制服が「ダサい」と酷評されるなど、国民が一丸となって五輪成功を目指す機運が高まっているとは言えそうにない状況だ。