ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭

しくじり佐野研二郎氏に足りない「リスペクト」と「許される力」

竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]
【第140回】 2015年8月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 佐野研二郎とはいったい何者なのか? 世間的には「いま、日本でもっとも有名で旬のアートディレクター」ということになっていて、それはもちろん間違いではないかもしれないが、僕が問うてみたいのは、彼が「何をやってきたのか」ではなくて、彼の「クリエイターとしての本質」である。

 それはつまり、ますます世界を巻き込んで広がっている一連のパクリ疑惑そのもの、つまり佐野氏が何をパクったかということよりも、今回のパクリ騒動がなぜここまで大騒動になったか、ということである。

 結論を先に述べると、いまだに騒ぎが収まりそうにない今回の騒動の本質は、パクリではなく、佐野研二郎というクリエイターの本質と、日本社会の伝統的な美意識の「対立」なのではないかということである。つまり、多くの人が考える「日本人のクリエイティビティに対する感覚」というものに対して、「佐野氏のクリエイターとしての感覚」が真っ向対立しているところに、今回の騒動の根本的原因があると思われるのだ。こんな人間が日本を代表するクリエイターだと評価させていいのか――。執拗に佐野作品の疑惑を追及する人たちの本当に怒りはそこにあると思う。

佐野作品になき「オリジナリティ」

 ちなみに、多くの人が考える「日本人のクリエイティビティに対する感覚」とは、“オリジナリティ”と“リスペクト”だと思うのだが、残念ながら佐野氏の作品からはそれが感じられない。身内の業界人以外からは佐野氏擁護の声がほとんど聞こえてこないのも(ただしその擁護者の多くも、例のサントリーのトートバック事件以降、逃げてしまったようだが)、この二大要素が決定的に欠けているからだと思う。

 騒動をさらに大きくさせたサントリーのトートバック問題でも、多くのデザインに他者作品のパクリが指摘された。佐野氏側はそれを「トレース」と表現しているが、トレースどころか素材の画像をそのままコピペしただけのような事例も見受けられる(事実、そうした作品は後日取り下げられた)。僕ももちろん、これらの行為は明白なパクリ行為だと思う。

 しかし誤解を恐れずに言えば、たとえ誰かの作品をパクったとしても、そこにオリジナリティがあれば、それは作品としてOKだと思う。代表的な例が、音楽の世界における「サンプリング」だ。

 サンプリングというのは、過去の名曲や偉大なミュージシャンのフレーズなどをそのままコピペして使用しながらも、原曲を超える、あるいはまったく別の世界観を持つオリジナル曲を作る手法のこと。これが音楽の世界でちゃんと市民権を得ているのは、著作権処理をちゃんとしているとかそういう業界ルールや手続きとかではなくて、そこにオリジナリティがあると多くの音楽ファンが認めているからだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]

マーケティング・コンサルタントとしてクルマ、家電、パソコン、飲料、食品などあらゆる業種のトップ企業にて商品開発、業態開発を行なう。近年は領域を社会貢献に特化し、CSRコンサルタント、社会貢献ビジネスの開発プランナーとして活動。多くの企業にてCSR戦略、NGOのコミュニケーション戦略の構築を行なう。「日本を社会貢献でメシが食える社会にする」ことがミッションに、全国各地で講演活動を行なう。ソーシャル系ビジネスコンテストや各種財団の助成金などの審査員多数。また、「日本の女子力が世界を変える」をテーマに、世界の女性、少女をエンパワーメントするための団体「ガール・パワー(一般社団法人日本女子力推進事業団)」を、夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏、日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカ氏らと共に設立。著書に『社会貢献でメシを食う。』『ジャパニーズスピリッツの開国力』(いずれもダイヤモンド社)がある。

株式会社ソーシャルプランニング
☆竹井氏ブログ 社会貢献でメシを食う〝REAL(リアル)〟
☆Twitterアカウント:takeiyoshiaki


社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭

CSRやコーズマーケティングをはじめ、「社会貢献」というテーマがポピュラーとなったいま、「社会貢献のセカンドウェーブ」が来ている。新たなサービスやプロジェクトのみならず、新たな主役たちも登場し始めた。当連載では話題の事例を取り上げながら、社会貢献的視点で世の中のトレンドを紹介していく。
*当連載は、人気連載『社会貢献を買う人たち』のリニューアル版として、2014年1月より連載名を変更しました。

「社会貢献でメシを食う。NEXT 竹井善昭」

⇒バックナンバー一覧