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ぼくらの仮説が世界をつくる
【第9回】 2016年5月11日
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佐渡島庸平 [株式会社コルク代表取締役]

【入山章栄×佐渡島庸平】未来のエンターテイメントのビジネスモデルを考える <最終回>

『ぼくらの仮説が世界をつくる』(ダイヤモンド社)を上梓した株式会社コルクの代表取締役・佐渡島庸平氏と、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』を上梓した早稲田大学大学院経営管理研究科准教授・入山章栄氏が「エンターテイメント産業の未来」「クリエイティブのための組織のあり方」などについて語りあった。

作品の先にある「願い」を現実化する

佐渡島 リアルなコミュニティにつなげる仕組みづくりの一つとして、これからALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の方たちとお会いするんです。

入山 ああ、『宇宙兄弟』に描かれていた関係で。

佐渡島 そうです。『宇宙兄弟』のファンって、「世の中を良くしたい」と思うタイプの読者が多いんですよね。

入山 なんか、そんな気はします。

佐渡島 『宇宙兄弟』作者の小山宙哉さんと僕らが、まず毎年安定的にALSに寄付をする。そして、『宇宙兄弟』のグッズを買うと、追加で「ついでに寄付しませんか」ってボタンが出てくる。そんなふうに、何か商品を買うごとに寄付できる仕組みを、つくろうかなと思ってるんですよ。

 コルクは、取材したり、それを世間に正しく伝えたりすることは得意なんで。その記事を定期的にサイトにアップしていくことで、寄付する人も増えていく。まずは1000万とか2000万でも、難病の研究のために、研究者に渡せばかなり進歩する可能性がある。

 難病の研究者は、本当にどこからもお金が出ないという状況にあるんですよ。『宇宙兄弟』のコミュニティを大きくしていくと、10年後とか20年後っていう単位で見ると、1個ずつ難病をなくしていけるかもしれないと考えているんです。

 それで、『宇宙兄弟』のまわりにあるコミュニティが、なんか自分たちが楽しんでいるのに、ついでに難病がなくなっていく様子とかを見られて、おもしろいだろうなと思ってて。

入山 おもしろいでしょうね。

佐渡島 CSRみたいなものが、分離して起きないようにしていく仕組みを、コミュニティをつくるとできるんじゃないかと思うんですよね。

 僕が「いいな」と思う作家って、「社会をこういうふうに良くしたい」という思いを持っていて、作品のなかにそのメッセージを込めている。メッセージは、心の中に置物を置いてくるみたいなイメージでそっと描かれているんですが。たとえば、安野モヨコだったら、「日本の伝統の文化、工業を残したい」みたいな思いがあるんですよ。

 だとすると、じゃあ、鎌倉の街の趣ある家を残すために寄付をしましょうというような、作家が世の中に残したい、大切に思ってることっていうものを、活動体として組み直すことができるんですよね。そこまで全部やり切れる仕組みをつくりたいなと思ってるんです。

入山 それは誰もやってないチャレンジですね!

佐渡島 そうなんですよ。世界的にもやってないこと。チャリティにどーんと寄付することはありますが、作品が持ってる世界観の延長線上にあるものに対して支援できるような仕組みをつくりたいなと。

入山 おもしろいですね。そんな発想してる人、聞いたことないな。

「抽象概念」と「具体性」の往復思考

佐渡島『ぼくらの仮説が世界をつくる』でも書いているんですが、常に抽象から具体への思考の行き来、帰納法と演繹法による考えの行き来をしているんです。でも、みんなこの思考が結構できていないんですよね。僕はずっとそういう考え方をしている。だから、一つのアクションも結局何につながっているのかを重視しているというか。

入山 そういう思考法は意識してやっているんですか?

佐渡島 結構、自然とできていますかね。

 だから、僕は、ほぼメモを取らないんです。でも、数百個あるタスクを、ほとんど忘れない。やらないといけないことは、すべて基本概念にカテゴライズして記憶している。

 上位概念の下に4つくらいのミッションを設定して、さらにその下に20個ぐらいの枝葉があって、さらにその下に100個ぐらいの達成すべき事項があって、最終的には500個ぐらいのタスクがある。そうすると、初めの4つのミッションさえ思い出せば、バーっと下のタスクまで降りていけて、思い出せるんですよね。

 土日とか暇なときに、丁寧にタスクを下っていくから、全タスクが最終的に思い出せて、忘れることはない。一方で、みんなはいきなりこまごましたタスクを記憶しようとするから、漏れが起きちゃうんですよね。

入山 すごいですね、そんな考え方してるんですね。

佐渡島 結構、ほかの人とこの点は考え方が違うんだなと思って。

 違いますね。

佐渡島 それで、僕は上位のミッションというか抽象概念のところを、鋭くして言語化すれば、ビジネスとしては最終的に勝てるだろうなと思ってもいるんです。だから、タスクをたくさんこなしていくよりも、経営学者みたいな人たちと話して、上位概念にある抽象的なところだけいっぱいしゃべりたい。そこを鋭くしたい。

入山 そうですね。経営学者じゃなくてもいいのかもしれませんけど、やっぱり学者の仕事って理論化であり抽象化なので。佐渡島さんのような思考法を、学者以外でする人って珍しいと思います。いい経営者はできているのかもしれませんが。

佐渡島 孫正義さんの社長室の人にお会いしたときに、「孫さんは細かいことから抽象的なことへの解像度がすごい」と言っていました。両方漏れがない。ソフトバンクの店頭での、ちょっとした業務のことを話していたと思ったら、「次はインド市場だ」みたいなことを急に言い出す。1日の中で何度も、何度も、抽象概念と具体的タスクの行き来をする。やっぱり、ぼやっとしてる人はこの行き来が弱いんですよね。

入山 そういう振り幅みたいのが、すごく大事だと僕も思います。内省して抽象した考えと、現場の具体感みたいなものの両方が必要。僕が、こういう対談などをさせてもらうのも、それが一つの理由で。学者は、ずっと抽象的なことを考えているんで、経営者の人の現場感を感じ取りたいんですよね。

佐渡島 まだまだ話したりませんね(笑)。また、改めて。今日はありがとうございました。

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佐渡島庸平 [株式会社コルク代表取締役]

1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦「バガボンド」、安野モヨコ「さくらん」のサブ担当を務める。03年に立ち上げた三田紀房「ドラゴン桜」は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1600万部超のメガヒットに育て上げ、TVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎「モダンタイムス」、平野啓一郎「空白を満たしなさい」など小説連載も担当。12年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。


ぼくらの仮説が世界をつくる

1600万部超 『宇宙兄弟』、600万部超 『ドラゴン桜』を大ヒットに育て上げた編集者であり、作家エージェント会社「コルク」を起業した、 いま注目度ナンバーワンの編集者・経営者が仕事論を初めて語る!

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