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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第18回】 2016年5月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

なぜプロ投資家は「株価はデタラメ」と考えるのか?
ランダムウォーク理論の考え方

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ファイナンス理論によれば、100日連続で上昇を続けた株であっても、101日目に上昇するか下降するかは、まったく確率的に等しい。世界中の投資のプロたちが前提にしている「ランダムウォーク理論」とは何なのか? そして、なぜ「デタラメ」であるにもかかわらず、「予測」が可能なのだろうか?

年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

市場はデタラメ。だから予測できる。

前回の記事では、リスクとは「過去のデータのばらつき」として考えられるということを確認した。この「ばらつき」は、統計学で言うところの標準偏差(Standard Deviation)にほかならない(標準偏差とは何なのかということはひとまず後回しにしよう)。

ここで重要なのは、「不確実性としてのリスク」の大きさが、統計学的な数値として可視化できるということだ。

僕の最新刊『あれか、これか—「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』で扱った4つのノーベル賞理論(MM理論や現代ポートフォリオ理論、CAPM理論、ブラック・ショールズ式)の登場にとっても、このリスク定量化の考え方は欠かせないものなのである。

 「株価のリスクを標準偏差として表現する」という発想は、実のところ、それほど古くからある考え方ではない。経済学自体が人類の歴史に比べると、まだまだ非常に若い学問なのはたしかだが、ファイナンス理論はその経済学の中でも最若手の分野だと言っていい。

20世紀の中盤ごろまで、いわゆる金融市場はまともな市場とは見なされていなかった。ただの「カジノ」だというわけだ。つまり、株価の動きには経済学の理論が当てはまる余地はほぼないと考えられていたのだ。

近代経済学の祖であるジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)ですらも、「金融市場における投資家の行動パターンは『美人投票』である」と語った。

ここでいう美人投票とは、最も票数の多かった候補者に投票した人が賞金を得るというゲームのことだ。このゲームで賞金を得るには、「自分が誰を美人だと思うか」ではなく、「ほかのみんなが誰を美しいと思うか」の予想が重要になる。誰もがそうした思惑の下で投資をしており、その結果が相場にほかならないというわけだ。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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