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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第16回】 2016年5月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

え?「リスクは危険ではない」んですか?
ファイナンス理論が前提とする「不確実性」としてのリスク

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モノの「現在価値」を大きく左右するのが「金利」である。ファイナンス理論によれば、金利とは「リスクに対する見返り」に他ならない。では、そもそもリスクとは何なのだろうか?

リスクにまつわる「やってしまいがちな2つの誤解」について、発売からわずか1週間半で重版が決定したファイナンス理論の入門書『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』をベースに解説していこう。

人食いザメのいるプールに
落ちたときのリスクは?

前回の記事では、モノの価値を決定する重大要素である「金利」が、「リスクに対する見返り」から構成されていることを確認した。

今回はまず、リスクという言葉について、かなりよく見られる「2つの勘違い」を解いておくことにしたい。ポイントは次のとおりだ。

(1) リスクとは危険のことではない
(2) 望ましいリスクもある

まずは1つめから。
ここまでの連載で僕たちが考えていたのは、債券購入や融資、あるいは友人への資金援助といった「お金を貸すタイプの投資」だった。貸し倒れが発生し、元本割れする(もともとあった金額を下回る)可能性のことをダウンサイド・リスクと呼ぶことはすでに見たとおりだ。

これは、僕たちがふだんの生活の中で「その新規事業は失敗するリスクが高いな」「万が一のときに備えて、リスクを分散しておきましょう」などと語るときの語感に近い。

このとき僕たちは、この言葉を「危険性」の意味で使っている。具体的な目の前の「危険(danger)」ではなく、「危険が起こる可能性」を指しているわけだ。危険と危険性の違いについて整理しておこう。

人食いザメのいるプールに落ちてしまったとき、それは「リスク(危険性)」が高いというよりも「危険」そのものである。逆に、そのプールの横を歩いているとき、プールに落ちる「リスク(危険性)」が発生する。

このように、僕たちはリスクを「危険なことが起こる確率」と考えている。プールサイドを歩いているとき、「プールに落ちるリスク」は0.01%だとしよう。ではプールに実際に落ちてしまったとき、このリスクはどう変化するだろうか?

いったんプールに落ちてしまえば、これ以上「プールに落ちる危険性」はない(確実にプールに落ちている)ので、リスクはゼロだ。もう1つ例を考えてみよう。

【問題】
あなたの友人が難病にかかり、医者に「余命5年」と宣告された。しかし、その後も彼は生き続けた。グラフのように死亡確率が推移するとき、この友人の死亡リスクが最も高くなるのは、いつの時点か? ただし、この医者の予測は絶対に当たるものとする。
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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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