4月25日の公判で検察側から懲役3年を求刑された元兵庫県議・野々村竜太郎被告。号泣会見や初公判のドタキャンなど、問題言動だらけだが、そもそもなぜ野々村被告が当選できてしまったのだろうか?
野々村容疑者が意外にも持っていた
「選挙必勝の条件」とは?
「まさかあんな人に自分が投票したとは思いもしませんでした」――。
今年2月22日、神戸地裁で開かれた元兵庫県議・野々村竜太郎被告(49歳、詐欺、虚偽有印公文書作成・行使で起訴)の公判を傍聴した兵庫県西宮市に住む30代男性は、記者の「傍聴席から見た野々村被告にどんな印象を受けたか」との質問にこう答えた。
この男性が住む兵庫県西宮市は、野々村被告が選挙区としていた地域である。この日の公判で、野々村被告は政務調査費・政務活動費を巡る一連の疑惑について追求され、右耳に手をかざす、お得意の“ののちゃんポーズ”で応戦。検察官から「その格好は結構なので」と拒まれる場面もあった。
ボサボサに伸びた髪と髭、紺色のジャージ姿で「記憶にございません」を繰り返す様子は、選挙民から付託を受けた政治家だった者が持つであろう威厳が何ひとつ感じられない。冒頭の地元男性が続けて語る。
「彼の経歴だけを見ていました。“維新”に属しているというから投票したようなものです。でも後で聞くと、『維新の会』で代表を務めた橋下徹氏とは無関係だそうですね。なんだか騙されたような気持ちです」
野々村被告の属する政治団体「西宮維新の会」は、「大阪維新の会」(当時)とは何の関係もない。野々村氏の当選は、歯に衣着せぬ物言いと大胆な政策の打ち出しで、関西では圧倒的な人気を誇った大阪維新の会と有権者が混同、「これに乗じたものだ」(地元紙社会部記者)という声は今も根強い。
事件が明るみになった当時、巷では野々村被告の議員としての“資質”を問う声が上がった。同時にまた、選挙民のそれも問われた。なぜ選挙民は野々村被告に議席を与えたのか。政治家としての資質の有無を見抜けなかったのだろうか。
「“維新”という言葉、そして橋下元大阪市長と同じ大阪府立北野高校卒。関西大学卒の元地方公務員――この経歴を聞かされたら、誰でも野々村被告に投票しますよ。彼の人間性など関係ありません。普通、地方選挙で候補者の人間性まで有権者が分かることは、あまりないのではないですか」(冒頭の地元男性)
一見、開き直りとも取れる発言だが、これは国政・地方問わず選挙時の有権者心理を如実に表している。
いつの時代でも選挙に打って出るには、地盤(=支持者)・看板(=知名度)・鞄(=選挙資金)の「3バン」が必要だ。国・地方政治問わず、選挙に携わった者は皆、もっとも大事なものは意外にも地盤でも鞄でもなく、“看板”だと口を揃える。この看板は2つの要素から成り立つ。“風”と、(候補者個人が持つ)“華”だ。そして、野々村被告は、この“風”と“華”の要素を併せ持っていたのだ。