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日本GE合同会社CEO 安渕聖司

ひるまずに「選択と集中」をどう判断するか

日本GE合同会社代表職務執行者社長兼CEO・安渕聖司

安渕聖司 [日本GE合同会社代表職務執行者社長兼CEO]
【第1回】 2016年5月9日
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米GEは、インダストリービジネスへの「選択と集中」を進めるためにGEキャピタルの売却を決めた。これを受けて日本GE株式会社GEキャピタルも、2016年4月に三井住友ファイナンス&リース(SMFL)のグループ会社となり、日本GE合同会社として再スタートを切った。GE時代から社長を引き継いだ安渕聖司社長が、「選択と集中」による「変化力に満ちた経営」の神髄を披歴する。

Photo by Yoshihisa Wada

事業再編に一切のタブー、ためらいがあってはならない

 今回のGEキャピタルの売却は、GEの「選択と集中」戦略の厳しさに、改めて尊敬さえおぼえるものだった。戦略遂行力の強さや確かさを当事者であるからこそ感じるのである。

 2001年にGE9代目の会長職にジェフリー・イメルトが就き、その後、インダストリービジネスへの注力と金融事業の再編が進められてきた。それでもなおGEキャピタルは、2007年にはGEグループの営業利益の約7割を生み出していた。

 GEキャピタルは、その利益でGEのR&D資金を確保するという大きな任務を持っていた時期がある。しかし金融サービスが高度化してR&Dをファンディングすることができるようになる一方で、3Dプリンターに象徴されるような製造業の大きな構造変化が起きている。

 今回のGEキャピタルの売却には、「現代の金融は専業の形態で行われるべきだ」という取締役会とイメルトの決断がある。それは「5年後、10年後の世界」を見据えた決断だ。

 また、売却して事業全体が縮小したのでは意味がないが、売却資金を元にアルストムを買収したりもしている。アルストムの買収は、何十年に一度あるかないかのM&Aチャンスだ。そのチャンスを着実につかみ、変革を加速させる。そういう戦略なのである。

 振り返ってみても、GEの事業再編には本当にためらいがない。例えばGEキャピタルの前にはプラスチック事業が売却された。

 アポロが月に行った1960年代、宇宙飛行士のヘルメットに使われたのがGEのプラスチックだった。プラスチック事業は、GEにとってはいわば名門事業であり、8代目会長のジャック・ウェルチも、現会長のイメルトも共にプラスチック事業部門の出身だ。

 それほどの名門事業であってもGEは、「変化するために売る」ことにためらいを見せなかった。「自分たちが経営して継続的にしっかりとした結果を出せるか」「必要な原材料や経営資源をきちんと手に入れられるか」。それらについて常に、そして詳細にチェックを繰り返してきた。

 何らかの理由で自分たちがコントロールできなくなっていたり、技術や人材などの資源を持っていないと分かれば、「では誰が、どのような形で経営することがいちばん良いのか」「上場したり売却したりした方が社会から正しい評価を得られるだろう」などと駒を進める。

 そこには「祖業だから」とか「かつての大黒柱だから」とか「トップの出身部門だから」などという事情は一切忖度されない。

 翻って日本企業であればどうだったろうか。GEキャピタルほどの営業利益を生み出している“虎の子部門”を売却するとなれば、社内はもちろんメーンバンク、株主も含めて大騒ぎになっていたに違いない。

 GEにとっても今現在、事業が稼げているかどうかは重要だが、それ以上に事業が将来のGEの持続的な成長につながるかどうかがもっと重要なのだ。経営者には、未来像を示し、未来への布石を打つ構想力そのものが問われる。

 そのための変革の経営こそGEの神髄であり、私も2006年に当時のGEコマーシャル・ファイナンスに入社以来、経営者として徹底的にたたき込まれてきたものである。

 日本GE合同会社は、資本こそ離れたが依然としてGEに一番近い金融サービス業者であり、GEの動向を見ながら連携したり、GEによって汲み出された新しいニーズを親会社であるSMFLにつなげていく形になるだろう。そこには変革の経営の精神を受け継ぐことも含まれている。

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安渕聖司 [日本GE合同会社代表職務執行者社長兼CEO]

1979年早稲田大学政治経済学部卒、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクール(HBS)経営管理学修士(MBA)修了。三菱商事では、 貿易金融、資金調達、財務運用、M&Aアドバイザリー、会長業務秘書、IR(財務広報)等の業務を東京、仙台、ロンドン、ニューヨークにて担当。 99年、米国の投資ファンド、リップルウッドの日本法人立ち上げに参画。ファンド・レイジングの後、テクノロジー、化学産業を担当。 2001年、UBS証券会社入社。投資銀行本部の運輸及び民営化のヘッドとして、JR西日本およびJR東海の完全民営化、J-POWER(電源開発株式会社)の民営化・東証上場等、様々な大型案件を手がける。 06年、GEコマーシャル・ファイナンス・アジアに事業開発担当副社長として入社、07年9月にGEコマーシャル・ファイナンス・ジャパン社長兼CEOに就任。09年1月、GEキャピタル社長兼CEOに就任し、日本の金融サービス事業全般を統括。16年4月、三井住友ファイナンス&リースのグループ会社となった日本GE合同会社代表職務執行者社長兼CEOに就任。(日本GE合同会社は9月5日付で株式会社に組織変更し、商号を「SMFLキャピタル株式会社」に変更。SMFLキャピタル株式会社代表取締役社長兼CEOに就任予定)

 


日本GE合同会社CEO 安渕聖司

三菱商事入社後、ハーバードビジネススクールでMBAを取得、その後リップルウッド日本法人の立ち上げに参画し、UBS証券会社を経て2009年に日本GE株式会社GEキャピタル(現在の日本GE合同会社)社長兼CEOに就任、というキャリアを持つ安渕聖司氏。GEキャピタルでは、優れたビジネス業績やリーダーシップに対して表彰される制度「CEOアワード」を2011年、2012年と2年連続で受賞した。16年4月より、三井住友ファイナンス&リースのグループ企業となった日本GE合同会社の社長兼CEOとして引き続き同社の事業拡大を目指している。GEという世界的なエクセレントカンパニーで指揮した経営者が「成長し続ける組織作り」を語る。

「日本GE合同会社CEO 安渕聖司」

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