ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

為替や株を動かす「基礎的条件」の現代的考え方

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第35回】 2016年5月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 よく、ドル円為替相場が円高に大きく振れた時など、財務大臣が「経済のファンダメンタルズから見ておかしい」といった発言をする。財務大臣自身が分かっているかどうかはおいておくとして、読者のみなさんは発言の意味がよく分からないと思ったのではないだろうか。

 それは当然で、例えば、通貨・株式などの金融市場は「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)」では動かない。筆者はメガバンクにおいて国内及び海外で市場取引を行いながら、長年、専門の一つとして経済学的にも研究してきた。実はもっと直接的な「金融市場のファンダメンタルズ」があるのである。

 まず誤解があるのは「経済のファンダメンタルズ」とは、“経済”そのものの条件であり、具体的には、失業率・インフレ率・経済成長率・財政赤字・経常収支・貿易収支等をいう。これらは通貨や株式など、金融市場に“直接”関係するものではない。

 実際の金融市場の動きをよく考えてみれば、ベースにあるのは金融商品の需給なのである。その動きは、いつも双方向あるが、“水圧”の様なもので、売りと買いどちらの動きが強いか、ということになる。

 ここでは、大学時代から30年間で考えてきた外貨、株式などの金融市場の予想、及び実際のディーリング(投資)に役立つ分析手法と考え方の要点を説明しよう。これは筆者が、宿輪ゼミや慶應義塾大学経済学部の国際金融論の講義などで、実際に教えてきた内容である。

「金融市場のファンダメンタルズ」とは

 それでは具体的に見てみよう。

(1) 実需(影響:弱い)

 この部分は貿易収支・経常収支からなる。特に、貿易収支は古典的な金融市場分析や為替予想ではメインとなる方法であった。いわゆる「貿易黒字は 通貨高になる」というものである。そして、その結果、貿易収支が均衡する。さらに、その延長線上に「購買力平価説(Purchasing Power Parity: PPP)というものがある。為替レートはそれぞれの国の物価(ものの値段)が等しくなる基準で決まるというものである。以前は、事例として世界各国で販売されているマクドナルドのハンバーガーから逆算する「ビッグマック指数」が有名であった。最近では、スターバックスの「トールラテ指数」が有名である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
Facebook宿輪ゼミ:https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/
公式サイト:http://www.shukuwa.jp/    
連絡先: info@shukuwa.jp

 


宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

「宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説」

⇒バックナンバー一覧