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安東泰志の真・金融立国論

三菱自は今度こそ隠蔽体質を改められるか

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第69回】 2016年5月12日
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地道な現場の意識改革なしに企業の抜本的な改革はできない Photo by Kouichirou Imoto

 三菱自動車が燃費偽装問題で大揺れだ。

 2004年のリコール隠し問題で経営危機に陥った時、筆者は自らが運営する事業再生ファンドで33%強の株式を掌握した上、取締役事業再生委員長として同社の再建に関与した。今回の三菱自動車の不祥事は、当時から横たわっていた社内風土の問題が源流にあって発生したものであることは間違いない。

 そういう背景からか、今回の問題が発生してから、なぜか当時の資料の一部がメディアに流出し、その内容に改めて焦点が当たっているように思われる。その一方で、的外れなコメントをする識者や、果ては「潰れてしまえ」といった乱暴な意見までもが散見される。

 この期に及んではやむを得ない。社員をはじめ、真面目に働いている関係者の名誉のためにも、当時再生支援に取り組んだ経験から、開発機密など守秘義務に抵触しない範囲で、既にネット上に開示されている資料のみを例示しつつ、当時既に報道されていた内容に基づいて事実をなるべく正確に整理したい。それと共に、改めて同社の再生のために何が必要かを考えてみたい。

新たなリコール隠しで
支援スキームが瓦解寸前だった前回の経営危機

 04年4月23日、それまで筆頭株主として三菱自動車を支えていたダイムラークライスラーが追加支援を拒否し、出資を引き揚げる意向を示したことが前回の危機の発端だった。

 同年6月には、乗用車の新たなリコール隠しが突然発表された。既に5月に支援を決めていた筆者が運営するPEファンド(フェニックスキャピタル、現・ニューホライズンキャピタル)はもちろん、関係者の多くにも抜き打ちに近い形の発表だったので再生支援は瓦解寸前になった。

 それは、このことが、その前の2000年に発覚したリコール隠し問題がまだ解決していなかったことを意味するからだ。筆者のところには多くのマスメディアから支援を予定通り続けるかどうかの問い合わせがあったが、メインバンクなど関係者の結束によって何とか支援は実施された。その際に、我々がJPモルガンと組んで、格付けがC(債務不履行の可能性が高いとの認定)であった同社に対し、2000億円もの増資を実施できたことは奇跡に近かった。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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