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人手不足の時代に本気で考える アルバイト人材育成
【第5回】 2016年6月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
中原淳 [東京大学 大学総合教育研究センター 准教授]

ぶっちゃけ店長覆面座談会(2)
新人バイト、どう育てますか?
中原淳(東京大学)×外食チェーン店長3人

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「アルバイトの人手不足」が話題になって久しい。現場ではいったい何が起こっているのか?今回、大手外食チェーン店の現場で奮闘する3人の店長にお集まりいただき、都内某所で「店長覆面座談会」を開催した。
聞き手は、テンプグループとともに、全国約2万5000人を対象としたアルバイト雇用調査を行い、『アルバイト・パート[採用・育成]入門』(ダイヤモンド社)を刊行予定の東京大学・中原淳准教授。
覆面形式ならではの「ぶっちゃけトーク」だった前回に引き続き、第2回も生々しい話題が数多く飛び出した。(構成/高関進)

リーダー格、ベテランアルバイトと
店長とのパワーバランス

【中原淳(以下、中原)】調査では、さまざまなことがわかっていますが、店舗にいる「インフォーマルリーダー」の存在も浮かび上がってきています。インフォーマルリーダーとは、店長のようにフォーマルなリーダーではなく、アルバイトやパートのなかにいる「非公式の右腕人材」のことですね。新しく店長として赴任した方の多くが、「長く勤めているキーマンのアルバイトさんをどう掌握していくかがキモだ」と言っていますが、実際どうでしょう?

C店長(男性)某中華料理チェーンで店長歴4年。現在は都内(23区外)の店舗を担当。つねにギリギリの状態でお店を回しており、外国人アルバイトも採用している。

【C店長】私の店は社員が私一人しかいないので、アルバイトを大事にしないと店がそもそも回らないんです。ですから、特にリーダー格や主婦の方は大事にしていますね。私も最初は、前任の店長、もしくは長く働いているバイトさんから話を聞くようにしました。
「こうやったら効率が上がりますよ」ということを、最初にリーダー格の人に話してみると、「あ、いいですね、じゃあさらにこうやったらどうですか?」とアイデアをくれることがあります。そうなってくると、「やった!」という気持ちになります。

【中原】リーダー格にまず相談していくというスタイルですね。

【C店長】新しく着任したときは、そういう人と仲良くできないと全部崩れてしまい、1からすべてやり直しになりますから。

【中原】前任の店長との引き継ぎはあるんですか?

【C店長】アルバイトに関する引き継ぎは、「この人はこれが得意」「この人はこういう性格」など一人ひとりあります。私の店はアルバイトが20人くらいなので、「この人がリーダー格」「この人はちょっと気をつけてね」など引き継ぎを参考に観察し、様子を見ながらですね。店長が変わったとき、最初はアルバイトさんって本性を隠すんです。

【中原】「引き継ぎの話と違うじゃない」ということが最初はある?

【C店長】店長のやり方も変わるんで、それに疑問を持っていやになってくるアルバイトさんもいると思います。でも、自分の色を出すためにいろいろ工夫してやっていけばなんとかなるだろうと、あまり難しく考えずにやるようにしています。

A店長(男性)某ファミレスチェーンで店長歴13年。現在は東京都心部の店舗を担当。周りに飲食店が多く、アルバイト1人あたりの採用単価は15~20万円。アルバイトは15名程度で、すべて学生。

【A店長】リーダーさんが話をわかってくださる方であればいいんですが、そうでないときも多々あります。リーダーさんは今まで自分が頼られてきたわけで、その地位が脅かされそうになると気分を悪くしたりするんです。
でも私は、そういうリーダーさんの権力を、できるだけなくしていこうという方針です。新しく採った人に、リーダーさんがやっていた仕事をいきなりやらせる。「リーダーさんじゃなくても誰でもできるんですよ」という雰囲気にしていくと、それが気に入らないリーダー格の人は辞めるか、こちらの言うことに耳を傾けるようになります。なるべくピラミッド構造にならないように、「そんなところで威張らなくてもいいんだよ」とわかってもらうようにしますね。
店長が人手不足で困っていると、労働時間の部分でも仕事の幅でも、どうしても「できる人」に頼ってしまいがちになります。特定の人に頼ってしまうと、その人がいなくなると回らなくなってしまう場合があり、その人の気分で店が左右されることをなくしていこうということです。

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中原淳(なかはら・じゅん) [東京大学 大学総合教育研究センター 准教授]

東京大学大学院 学際情報学府(兼任)。東京大学教養学部 学際情報科学科(兼任)。大阪大学博士(人間科学)。
1975年北海道旭川生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員等を経て、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、リーダーシップ開発について研究している。専門は経営学習論(Management Learning)。
著書に、『会社の中はジレンマだらけ』(光文社新書)、『アクティブトランジション』(三省堂)、『職場学習論』『経営学習論』(以上、東京大学出版会)、『企業内人材育成入門』『研修開発入門』『ダイアローグ 対話する組織』(以上、ダイヤモンド社)など多数。


人手不足の時代に本気で考える アルバイト人材育成

各業界で「アルバイト・パートの人手不足」が深刻化している。いまこそ企業は「使い捨て人材」としてのイメージを捨て、真剣に「バイトの主力化」に取り組まなければならない――。こうした問題意識の下、東京大学・中原淳准教授とテンプグループは、小売・飲食・運輸業界大手7社8ブランドの2.5万人を対象に、国内初の「アルバイト・パート雇用」に関わる大規模調査を実施。これからの「バイト人材育成」に欠かせないポイントはどこにあるのか?

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