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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

民進党が共産党と共闘するのはあり得ない選択肢だ

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第132回】 2016年5月24日
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 安倍晋三首相と岡田克也民進党代表は「党首討論」で、2017年4月の消費税率10%への引き上げの是非について論戦を交わした。岡田代表は「引き上げを先送りせざるを得ない」と主張し、「2019年4月まで消費増税の3年間延期」を首相に迫った。一方、首相は2014年12月に「消費増税を延期する決断を致しました」と言って衆院を解散した前歴がある(第94回)。首相が、再び増税延期を決断するという見方は根強いが、党首討論では「適時適切に判断する」と繰り返すだけで明言を避けた。

民進党の「消費増税延期」で
自民党は野党の主張には乗りづらくなった

 岡田代表が「消費増税延期」を安倍首相に迫ったことは、来たる参院選のための戦術として合理的ではある。まず、首相より先手を打って「増税延期」を打ち出したことで、参院選前の与野党の駆け引きで主導権を握ろうとした。首相が野党の主張に乗ったというのでは格好がつかない。首相は増税延期を言いにくくなるからだ。首相が増税延期を決断するには、野党を超える「理屈付け」が必要になった。

 また、2014年12月に増税先送りを理由に衆院を解散したように、安倍首相が「衆参同日選」に打って出ることを封じる狙いもあるだろう。誰も反対しない増税先送りだが、今度は「野党のが主張」したということになる。2014年12月のように、首相が主導権を取って、一方的に押し切るという選挙はできなくなるからだ。

 そして、安倍首相が増税先送りを決めれば、野党は首相を「うそつきだ」と批判することができる。首相は、2014年12月の衆院解散時、「必ず消費税を上げられる状況にする」「再び延期することはないと断言する。確実に引き上げていく」と国民に約束していたからだ。

 更に、首相が「消費税を上げられる状況」を作れなかったのだから、野党は「増税延期はアベノミクスの失敗」だと批判することもできる。党首討論では、岡田代表が「消費がこれだけ力強さを欠いているなかで、もう一度消費税の引き上げを先送りせざるを得ない状況だ」と指摘し、アベノミクスの失敗の責任を取り「内閣総辞職すべきだ」と首相に迫った。

 一方で、安倍首相が予定通り増税を断行するならば、それはそれで野党に不都合はない。「増税延期」は野党の公約となり、首相は「不人気な増税」を公約に参院選を戦わねばならなくなる。岡田代表は、先手を打って増税延期を主張することで、安倍首相が増税についてどう判断しようと、野党側が主導権を握ることになると考えたのだろう。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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