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トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ
【第3回】 2016年5月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
林要 [GROOVE X代表取締役]

Pepper元開発リーダーが明かす、
「少しバカ」でも「○○」な人ほど結果を出す理由
トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法

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「0」から「1」を生み出す力を日本企業は失っているのではないか? そんな指摘が盛んにされています。一方、多くのビジネスパーソンが、「ゼロイチを実現したいが、どうしたらいいのか?」と悩んでいらっしゃいます。そこで、トヨタで数々のゼロイチにかかわった後、孫正義氏から誘われて「Pepper」の開発リーダーを務めた林要さんに、『ゼロイチ』という書籍をまとめていただきました。本連載では、その一部をご紹介しながら、「会社のなかで“新しいコト”を実現するために意識すべきエッセンス」を考えてまいります。

 

「慎重派」と「おっちょこちょい」

 新入社員には大きくふたつのタイプがいるように思います。
 ひとつは、どちらかというとモノゴトに対して慎重でコンサバティブにふるまうタイプ。そして、もうひとつが、「こうあるべきだ」と思ったら、深く考えずにやってしまうタイプ。僕は、後者でした。要するに、おっちょこちょい。若いころは浅はかですから、トラブルを引き起こして、職場に迷惑をかけてしまったことも一度や二度ではありません。何度も怒られては、落ち込んだものです。

 今でも、忘れられない失敗があります。
 あれは、入社2年目のこと。当時、僕は、トヨタの実験部でコンピュータによる解析を担当していました。解析に使われていたのは、一台1000万円弱もするUNIXワークステーションという特殊なコンピュータ。しかし、間もなくパソコンの時代が来ることは間違いありませんでしたから、僕は、なかば強引にUNIXワークステーションをパソコンに切り替えることにしたのです。

 もちろん、単に”新しいもの”に変えたかったわけではありません。
 UNIXワークステーションは高価ですので、導入台数が限られるために、解析の回数に制限がかかってしまいます。一方、はるかに安価なパソコンであれば導入台数を増やすことが可能。その結果、自分の興味の赴くまま、納得できるまで解析を繰り返すことができるのです。

 ただ、職場の人たちは、あまり乗り気ではありませんでした。現状のままでも仕事は回っているのだから、あわてることはない。もう少し状況を見極めてからでいいだろう、という雰囲気でした。保守的ですが、常識的な判断。しかし、僕はやらずにいられなくて、「任せてください」と押し切ったのです。

 ところが、パソコンへの移行完了後、順調に動き出したと思ったころにトラブルが発生。保存していたデータが全部飛んでしまったのです。データを保管するNASという記憶媒体の安定性をきちんと検証しなかったのが原因でした。多大な迷惑をかけ、謝るほかありませんでした。

 データの復旧はできなかったので、やむなく残されていた報告書から再度データを入力したり、再計算したりして、データを再現。たいへんな作業でしたが、やるしかない。そんなわけで、おそろしく遠回りをしましたが、どうにかこうにかパソコンへの移行を完了。なんとかなった、というわけです。

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林要(はやし・かなめ) [GROOVE X代表取締役]

林 要(はやし・かなめ) 1973 年愛知県生まれ。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)に進学し、航空部で「ものづくり」と「空を飛ぶこと」に魅せられる。当時、躍進めざましいソフトバンクの採用試験を受けるも不採用。 東京都立科学技術大学大学院修士課程修了後トヨタに入社し、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」の開発プロジェクトを経て、トヨタF1 の開発スタッフに抜擢され渡欧。「ゼロイチ」のアイデアでチームの入賞に貢献する。帰国後、トヨタ本社で量販車開発のマネジメントを担当した際に、社内の多様な部門間の調整をしながら、プロジェクトを前に進めるリーダーシップの重要性を痛感。そのころスタートした孫正義氏の後継者育成機関である「ソフトバンクアカデミア」に参加し、孫氏自身からリーダーシップをたたき込まれる。 その後、孫氏の「人と心を通わせる人型ロボットを普及させる」という強い信念に共感。2012 年、人型ロボットの市販化というゼロイチに挑戦すべくソフトバンクに入社、開発リーダーとして活躍。開発したPepper は、2015 年6 月に一般発売されると毎月1000 台が即完売する人気を博し、ロボットブームの発端となった。 同年9 月、独立のためにソフトバンクを退社。同年11 月にロボット・ベンチャー「GROOVE X」を設立。新世代の家庭向けロボットを実現するため、新たなゼロイチへの挑戦を開始した。


トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ

「0」から 「1」を生み出す力を日本企業は失っているのではないか? そんな指摘が盛んにされています。一方、多くのビジネスパーソンが、「ゼロイチを実現したい が、どうしたらいいのか?」と悩んでいらっしゃいます。そこで、トヨタで数々のゼロイチにかかわった後、孫正義氏から誘われて「Pepper」の開発リー ダーを務めた林要さんに、『ゼロイチ』という書籍をまとめていただきました。その一部をご紹介しながら、「会社のなかで“新しいコト”を実現するために意 識すべきエッセンス」を考えてまいります。

「トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ」

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