左からMIT テクノロジー・レビューのジェイソン・ポンティン、バイドゥのング、グーグルのノービグ、アレン人工知能研究所のエツィオーニ各氏 Photo by Noriko Takiguchi

 米国では、人工知能(AI)に関連したサービスやスタートアップが次々と立ち上がる中で、いったいAIとは今、どんな段階にあるのかを話し合う場も生まれている。テスラのイーロン・マスクやスティーブン・ホーキングが脅威論を掲げる中で、一般人にはその手がかりを得るすべがないのが実情だ。

 そうした中で、テクノロジー雑誌として有名な「MITテクノロジー・レビュー」が開催した『EmTech Digital 2016』会議(2016年5月23~24日)で、米国のAI研究と開発を代表する3人がそれぞれの意見を述べた。

 登壇したのは、アレン人工知能研究所所長のオーレン・エツィオーニ、グーグル研究ディレクターのピーター・ノービグ、スタンフォード大学教授でバイドゥのチーフサイエンティストのアンドリュー・ング各氏だ。

アルファ碁が人間に勝っても
人類の脅威ではない

 エツィオーニ氏は、「アルファ碁」が世界最強の李セドル九段に勝ったことなど、今、AIは「春」を迎えていると言う。これまでAI研究は、研究や開発が挫折して、何度も冬の時期を過ごしてきたこととの対比だ。

 だが、アルファ碁の勝利によって人類の存在が脅かされると危惧するのは、行き過ぎだと指摘する。「碁は白と黒のゲームで、動きも明確。また、勝ち負けは評価機能のひとつ」であるという。「機械がインテリジェントであることと、自律的であることとは別問題」というのが、同氏の指摘だ。

 アルファ碁に見られるAIは、決まったルールに沿って莫大なデータに基づき、高速に打つ手を判断するタイプのもの。一方、自律的であれば、AIが独自の価値判断を行って、人間には不利になる結果をもたらす可能性もある。

「現在の機械学習は、コンセプトを作ったり、アルゴリズムを作ったりと、99%は人間の手がかかっている」と言うエツィオーニ氏は、その半面、統計手法に基づいたもっと先、言葉のニュアンスを理解するようなところへまで到達しないと、AIは本当の意味で活かせないと主張している。