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人工知能はどこへ向かうのか?
米国のトップ研究者3人が白熱議論

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第391回】 2016年5月30日
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 マイクロソフトの共同創設者であるポール・アレンによって作られたアレン人工知能研究所では、「人々の共通の利益になるAIをめざす」という目標を設定している。現在行われている研究には、医療用の検索を論文の意味論的な解釈に基づいて行えるようにすることなどが含まれるという。

 グーグルのノービグ氏は、「グーグルは、まずAIありきの企業」に変貌を遂げているという。そして、コンピュータやインターネットとやり取りする方法は、これまでのインタラクションから「カンバセーション(対話)」に変わるという。

 現在われわれが利用しているAIエージェントである「OK、グーグル」はその一部だが、やりたいこと、探したいことを、選択式ですらなく、コンピュータと対話を重ねることで手に入れる方法になるということだ。必ずしも音声に限らなくてもよく、それでも自然の言語でコンピュータとやりとりするのが当たり前になる日が近づいているということだろう。

ソフトウェア自身の変化が
バージョンアップに影響する

 その上で、機械学習の挑戦は、データがリアルタイムで刻々と変化していることだという。「以前は、ソフトウェアにはリリーススケジュールがあったが、今はステップごとにテストを行うようなことはできない。データは毎秒変化し続け、ソフトウェアが与えた影響によって、世界がまた変化するというこれまでにないフィードバックループが生まれている」。どんな変化が起こるかを予測するものも含め、もっと優れた開発ツールが求められているという。

 ング氏は、かつてグーグルのコンピュータリソースを利用して、ユーチューブの画像から学習したAIに猫を識別させたことで有名になった。ディープラーニングということばが広く知られるきっかけになった出来事だ。

 同氏は、「今はAIが取りざたされているが、そのうち電気のような普通のものなるはずだ」と語る。もはやインターネットがことさらに特別なものではなくなったのと同様、AIも社会の隅々にまでいきわたり、これに基づいて企業も成長戦略を立てなくてはならなくなる。重要度を増すのはデータで、バイドゥではデータを取得するために製品を作ることもあるという。

 バイドゥでは、自律走行車も開発中だ。現在自走車はすでに、信号や歩行者、自転車に乗る人々などを認識できるようになったが、未だ難しいのは道路工事のために警官が手信号を送るような場合だという。

 ング氏は、これはコンピュータビジョンの問題として解決しようとするより、工事現場の作り方を変えるといったインフラの適度な改訂によって対処できる問題ではないかとする。すべてをAIに任せるのではなく、人間社会側も少しAIが仕事をしやすいように変える、というアプローチと言うべきか。興味深い視点だ。

 折しも、ホワイトハウスの科学技術政策局が数日前に、AI規制の是非や安全性について話し合う4回のワークショップを開始した。AIは、あっと言う間にわれわれの現実問題になってきたのだ。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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