「にわか有機ELブーム」に飛びつく電機各社の浅慮液晶ディスプレイの次世代新技術「有機EL」に、電機各社がにわかに熱い視線を送り始めた。しかし、そのブームには落とし穴がある

「にわか有機ELブーム」に
飛びつく電機各社の皮算用

 液晶ディスプレイの次世代新技術「有機EL」(有機エレクトロルミネッセンス)という言葉を耳にしたことがある人は多いだろう。海外ではOLEDと呼ばれる。有機(オーガニック)の「O」に発光ダイオードの「LED」、つまり有機素材を用いたLEDということだ。

 液晶パネルは、パネルそのものが発光しているのではなく、液晶は光を通す、通さないをコントロールしているので、液晶パネルの背後には光源となるバックライトがあり、前面には色をつけるためのカラーフィルターが存在している。一方、有機ELは有機素材に電圧をかけると自発光(素材そのものが光る)するので、バックライトやカラーフィルターなどの余計な部材が必要なく、部品点数を減らすことでコストダウンが容易になるというポテンシャルがある。

 また、自発光する有機素材は印刷に近い技術で基盤に塗布することができるので、薄型化やフレキシブル化が容易とも言われている。

 2000年代半ばには有機ELが次世代テレビの本命として、韓国サムスン電子とLG電子が試作機を発表して話題となっていたが、その後一時沈静化していた。サムスン電子は同社のハイエンドスマートフォンに有機ELを採用してきた程度で、大きくクローズアップされることもなかったが、昨秋アップルが次世代iPhoneに有機ELを採用すると発表してから、にわかに業界を騒がせている。

 iPhone生産を手がける鴻海精密工業もシャープと一緒に有機ELを開発すると息巻き、日本の液晶パネルメーカーのジャパンディスプレイ(JDI)や中国メーカーも、こぞって有機ELに参入するという。

 しかし、有機ELにはいくつものハードルがある。また、それを越えても今までにない素晴らしい世界がメーカーにも消費者にも訪れるのかと言えば、筆者にはどうもそうではないように思える。今回は、電機各社がにわかに熱い視線を送り始めた有機ELの将来性について、分析してみよう。