東亞合成 代表取締役社長 COO 小淵秀範(こぶち・ひでのり)
【どんな会社?】
時代の変化を先取りしながら製品の幅を広げる
終戦直前の1944年に創立した東亞合成。あらゆる物資が不足していた戦後、産業の基礎素材となるカセイソーダや塩酸、次亜塩素酸ソーダといった化学品を製造し、成長の礎を築いた。
60年代の高度経済成長期には石油化学製品、そしてオイルショックに揺れた70年代には、景気変動に左右されにくい機能製品の開発を強化するなど、時代のニーズに合わせて製品ラインアップを拡充してきた。71年に発売した家庭用「アロンアルフア」も、機能製品の代表例だ。
2000年以降は、半導体・電子材料や自動車、メディカルなど、より高度な製品づくりが求められる産業にフォーカスし、その工程に欠かせない化学品を次々と開発。他社に真似のできない唯一無二の技術で、いくつものトップシェア製品を世に送り出してきた。そんな〝看板製品〟の1つが、「リチウムイオン電池用バインダー」だ。リチウムイオン電池にごく少量添加すると大きな出力を生み出せる化学品で、現在代表取締役社長COOを務める小淵秀範氏が、開発部門の責任者だった2010年代に手がけた。今でこそEV(電気自動車)のバッテリーを小型化するために不可欠な化学品となっているが、それをいち早く開発し、市場を席巻したところに、同社の先見の明と強いチャレンジ精神が表れている。
【何がスゴイの?】
基幹化学品の収益をベースに未来に積極投資
祖業である基幹化学品から、半導体やモビリティ向けなど最先端の高付加価値製品まで、フルラインアップで開発・製造できるのが東亞合成の強みだ。
上下水道の滅菌や基礎的な化学原材料の製造など、暮らしや産業に欠かせない基幹化学品は安定的な収益基盤となっている。
その収益をもとに、最先端製品の開発に積極投資するのが同社の成長戦略だ。開発には時間がかかるうえ、将来のニーズが保証されているわけではない。もちろん、ニーズを慎重に見極めたうえで開発を進めるが、その成果が必ずしも期待どおりになるとは言い切れない。だが、そのリスクを恐れて投資を躊躇すると、競合に先行され、ビジネスチャンスを手放すことにつながる。
そのため、ヒットする確率を高めるよう、同社は多様なテーマで最先端製品の研究開発を進めている。数多くの研究開発プロジェクトを同時に動かせるのは、80年以上にわたってフルラインアップの化学品を開発してきた「引き出しの多さ」があるからこそ。しかも、基幹化学品という安定基盤があるので、それぞれの開発プロジェクトに十分な資本が投入できるのだ。
一方、基幹化学品の収益性をさらに高めるため、供給体制強化に向けた設備投資も積極的に行っている。
既存事業と未来の事業にバランスよく投資する「両利きの経営」が、東亞合成の成長エンジンとなっているのである。
【下水道の老朽化対策】
陥没事故をきっかけに需要が大きく増加!
グループ会社であるアロン化成では、腐食した下水道の老朽取付管を効率的に補修する製品でトップシェア。道路が陥没した八潮市の事故をきっかけに需要が急増。25年上期の同製品の売上高は前年同期比で大きく伸長した。
漏水箇所に接合し補修する高機能管材製品。
【将来性は?】
半導体向けとモビリティ向けの製品開発に注力
東亞合成は、数あるテーマの中でも、将来性が特に期待できる半導体やモビリティ向けの最先端製品の開発に注力している。前者はAIの急速な普及、後者はEVやHV(ハイブリッド車)の普及、自動運転技術の進歩などによって、継続的な成長が見込める領域だからだ。
最先端製品はニーズの変化が目まぐるしい。自社の技術だけでなく、外部の優れた技術も取入れ、さらにスピード感を持って研究開発を行う必要性が高まっていることから、他社との提携やM&Aの機会も探っていく方針だ。また、これらの高付加価値製品群を主軸に、海外市場へ継続して挑むとともに、米国の瞬間接着剤拠点やタイのポリマー製造拠点といったグローバルな販売ネットワークを活用し、海外事業の拡大を図っていく。
【トップインタビュー】
他社に真似のできない化学品で社会課題の解決に貢献します
唯一無二の技術で社会課題を解決していきます、と語る小淵秀範代表取締役社長 COO。
東亞合成といえば「アロンアルフア」を連想されるほど、世の中からは瞬間接着剤の会社として認識されているようです。
しかし、私たちはそれ以外にも、多彩な化学品を世に送り出してきました。例えば、飲料水の滅菌に欠かせない次亜塩素酸ソーダや、先端半導体の製造に欠かせない世界トップシェアを誇る高純度液化塩化水素、EVからHV、FCV(燃料電池自動車)に必須の特殊化学品などです。いずれも快適な生活やテクノロジーの進化に欠かせない製品であり、当社の化学品は社会のさまざまなシーンで活躍しています。
これからも、他社には真似のできない唯一無二の技術で社会課題の解決に貢献していきます。
【株主優待制度新設】
「アロンアルフア」やカタログギフトなど進呈
25年12月期より株主優待制度を新設する。保有株式数と継続保有期間に応じて、アロンアルフアEXTRAゼリー状1本と、QUOカード(100株以上300株未満)や同社工場所在地の特産品をテーマにしたカタログギフト(300株以上)が進呈される。詳しくはHP参照。
※写真はイメージ。
【株主還元の強化】
総還元性向100%が目途、配当も今期は65円予想!
現在進行中の中期経営計画(23~25年度)で期間総還元性向100%を目途としている東亞合成。前期、前々期は達成しており、今期も100%を超える見通しだ。1株当たり配当金も3期連続増配を予定している。

