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トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ
【第4回】 2016年6月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
林要 [GROOVE X代表取締役]

孫正義氏に「ウチに来て、ロボットをやれ」と誘われ、0秒で「はい!」と即答した理由
トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法

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トヨタ自動車で、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」やF1などのゼロイチ・プロジェクトで経験を積んでいた林要さんに転機が訪れます。孫正義氏から「ウチに来い。ロボットをやってほしい」と直接声をかけられたのです。ロボットは門外漢だし、トヨタで積んできたキャリアもある……。だけど、その瞬間に「やります!」と即答。ほとんど動物的な判断だったといいます。なぜ、”無謀”ともいえる判断を瞬時に行うことができたのか?林要さんの著書『ゼロイチ』から、その背景にある「思考法」を抜粋してご紹介します。

孫正義氏と林要氏のツーショット写真。林氏がソフトバンク退職挨拶に訪れたときの一枚(林氏のFacebookより転載)

 

深く考えすぎずに、まず手を挙げる

 謙虚であることは美徳です。
 謙虚な気持ちを養わなければ、組織のなかでゼロイチを実現することはできません。会社でのあらゆる仕事はチームプレイ。相手の立場を尊重し、相手の意見に真摯に耳を傾ける姿勢がなければ、誰も力を貸してはくれないからです。

 ただし、注意も必要です。謙虚という言葉が自分の「逃げ場所」になってしまうことがあるからです。ゼロイチとは、いわば”分不相応”なチャレンジ。だからこそ、失敗するリスクも高い。しかしそこで、「控え目でつつましくなければならない」と自分に言い訳しながら、”安全地帯”にとどまる選択をしてチャレンジから逃げてしまうことがあるからです。

 これは謙虚の誤用。むしろ、僕は、自分のキャリアについては、図々しいくらいでちょうどいいと思っています。 

 振り返ってみれば、僕はずいぶん図々しい人間だと言えます。
「やりたい!」と思ったら、深く考える前に手を挙げてきました。

 たとえば、トヨタ時代のF1。当時、僕は英語がまったくできず、TOEICは248点という”論外”の成績。F1への応募基準をまったく満たしていませんでしが、それでも厚かましくF1行きを希望していました。努力してから希望を言うのが謙虚な姿勢でしょうから、「図々しい」を通り越して、「身の程知らず」と思われても仕方ありません。

 さすがの僕も、その認識はありましたが、行きたい気持ちを抑えて、心の内に留めておくことができない。人からどう思われようが、それは、その人が思うこと。ダメならダメと蹴ってくれればいいわけで、誰かに迷惑をかけるわけでもない。遠慮するのは、受け入れられないことを恐れて格好をつけているだけなのかもしれません。むしろ、ダメ元でも希望を表明しておかなければ、その願いが叶えられる可能性は限りなくゼロに近づきます。だから、手を挙げなければ損だと思うのです。

 そして、このとき図々しく手を挙げていたからこそ、ひとりの役員の目に留まり、僕は、F1への切符を手にする幸運に恵まれたのです。

 

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林要(はやし・かなめ) [GROOVE X代表取締役]

林 要(はやし・かなめ) 1973 年愛知県生まれ。東京都立科学技術大学(現・首都大学東京)に進学し、航空部で「ものづくり」と「空を飛ぶこと」に魅せられる。当時、躍進めざましいソフトバンクの採用試験を受けるも不採用。 東京都立科学技術大学大学院修士課程修了後トヨタに入社し、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」の開発プロジェクトを経て、トヨタF1 の開発スタッフに抜擢され渡欧。「ゼロイチ」のアイデアでチームの入賞に貢献する。帰国後、トヨタ本社で量販車開発のマネジメントを担当した際に、社内の多様な部門間の調整をしながら、プロジェクトを前に進めるリーダーシップの重要性を痛感。そのころスタートした孫正義氏の後継者育成機関である「ソフトバンクアカデミア」に参加し、孫氏自身からリーダーシップをたたき込まれる。 その後、孫氏の「人と心を通わせる人型ロボットを普及させる」という強い信念に共感。2012 年、人型ロボットの市販化というゼロイチに挑戦すべくソフトバンクに入社、開発リーダーとして活躍。開発したPepper は、2015 年6 月に一般発売されると毎月1000 台が即完売する人気を博し、ロボットブームの発端となった。 同年9 月、独立のためにソフトバンクを退社。同年11 月にロボット・ベンチャー「GROOVE X」を設立。新世代の家庭向けロボットを実現するため、新たなゼロイチへの挑戦を開始した。


トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ

「0」から 「1」を生み出す力を日本企業は失っているのではないか? そんな指摘が盛んにされています。一方、多くのビジネスパーソンが、「ゼロイチを実現したい が、どうしたらいいのか?」と悩んでいらっしゃいます。そこで、トヨタで数々のゼロイチにかかわった後、孫正義氏から誘われて「Pepper」の開発リー ダーを務めた林要さんに、『ゼロイチ』という書籍をまとめていただきました。その一部をご紹介しながら、「会社のなかで“新しいコト”を実現するために意 識すべきエッセンス」を考えてまいります。

「トヨタとソフトバンクで鍛えた「0」から「1」を生み出す思考法・ゼロイチ」

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