厚生労働省が先日発表した4月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は、3月から0.04ポイント上昇して1.34となった。これは、1991年11月の1.34と並ぶ、24年5ヵ月ぶりの高水準だ。また、就業地別の求人倍率が全都道府県で初めて1を超えた。
厚生労働省は、有効求人倍率の上昇を、「景気が緩やかに回復していることに伴い、雇用情勢も改善している」ことの反映だとしている。
しかし、内容を分析すると、高い有効求人倍率が示すのは、人手不足の深刻化であり、賃金が低い分野での超過労働需要であることが分かる。
求職者の減少の影響が大きい
有効求人倍率の上昇
第1に注目すべきは、求職者の減少の影響が大きいことだ。
有効求人倍率は、求人数の増加(つまり、雇用条件の改善)だけでなく、求職者の減少(つまり、人手不足の深刻化)によっても上昇する。
これまでは、両者がほぼ同じような影響を与えていた。
2015年12月以降を見ると、求職者の減少の影響のほうが大きい。
図表1に見るように、求職者は、15年12月以降、かなり減少している。16年4月を15年12月と比較すると、約8万6000人の減(4.4%の減)だ。
それに対して、求人数は、4月には増加したのだが、3月まではあまり顕著な増加ではなかった。16年4月を15年12月と比較すると、約1万9000人の増(0.8%の増)にすぎない。
つまり、この期間では、求職減のほうが約4.5倍の規模だったのである。
◆図表1:求人数・求職者数
労働人口の減少で
長期的にも労働力不足は深刻化
長期的に見ても有効求人倍率は上昇している。それは、求人数が増えたことにもよるが、労働力人口の減少によって求職者が減ったことの影響もある。
これについては、この連載ですでに指摘した(2015年6月4日、第15回「雇用情勢は好転ではなく、むしろ悪化している」の図表6:有効求人数と有効求職者数の推移)。