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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

「日本国債保有リスク」が三菱UFJ銀の資格返上で顕在化した

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第66回】 2016年6月16日
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photo by Takahisa Suzuki

 三菱東京UFJ銀行が国債の入札における「プライマリー・ディーラー」(国債市場特別参加者)の資格返上を検討中と報じられた。

 これは、日本の金融政策の行き詰まりを象徴するものであり、今後の金融情勢に対して大きな影響を与える可能性がある。

 以下では、まずこの決定が、マイナス金利がもたらす必然の結果であることを述べる。そして、それが金利高騰の引き金となる危険について述べる。

企業の資金需要伸び悩みが背景
国債業務は銀行の主要業務に

 国債業務は、これまで日本の銀行の中心的な業務になっていた。

 その背景には、企業の資金需要の伸び悩みがある。

 預金が増加する一方で、企業の資金需要が増加せず、むしろ借入金の返済が続く。こうした状況の中で、国債は資金の主要な運用先になってきたのである。

 銀行の国債保有額は、図表1に示す通りだ。2007、08年度末には70~80兆円程度であったが、12年度末には約122兆円まで増加した。

◆図表1:国内銀行の国債・財投債保有残高

(資料)日本銀行、資金循環

 他方で、国債の利回りは、低下してきた。図表2に示す10年国債の利回りは、2000年代の中頃には1.5~2.0%程度であったが、リーマンショック後あたりから傾向的に低下し、14年秋からは0.5%未満になった。そして現在ではマイナスになっている。

 これは、国債の市場価格が上昇してきたことを意味する。

 したがって、銀行としては、国が発行する国債を購入し、これを売却することを通じて利ザヤが稼げたわけである。

◆図表2:国債利回りの推移(10年国債)

(資料)財務省、国債情報
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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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