経営 X 人事

秘めた力を引き出す「脱・常識経営」<2>

吉永泰之・富士重工業 代表取締役社長

スバルらしさとは何か――飛行機会社の思想がいまも受け継がれる富士重工の吉永社長は、顧客たちがスバルのどんな点に価値を感じていたのかを考え抜く。そして行き着いたのが、「安全を重視する」と「意のままに操縦できる運転の愉しさを重視する」という価値を訴求することだった。吉永社長インタビューの第2回は、「安心と愉しさ」を提供するスバルの事業戦略について聞いた。(コンサルティング編集部 松本裕樹)

 スバルらしさを「安心と愉しさ」と定義したことで、会社はどのように変わったのでしょうか。

 「安心と愉しさ」という言葉の“ファジーさ”がとてもよかったと思っています。各職場が自分たちの「愉しさ」を解釈できます。

富士重工業 代表取締役社長
吉永泰之
1954年東京都生まれ。1977年成蹊大学経済学部卒業後、富士重工業入社。主に国内営業および企画部門を担当する。2006年戦略本部長、2007年スバル国内営業本部長、2009年取締役兼専務執行役員。2011年6月に社長就任後は次々と改革を断行し、売上高、各利益ともに4期連続で過去最高を更新。温和な表情だが、飛び出す言葉は時に鋭く手厳しい。三面六臂(さんめんろっぴ)の阿修羅像の写真を常に身近に置く。

 たとえば設計部門であれば「操縦の愉しさ」と言うし、営業部門であれば「スバル車を乗る人生の愉しさ」といったように自由に解釈できる。本社、工場、技術本部などそれぞれの職場に異なる「安心と愉しさ」がある。特に計算したわけではないのですが、こういう幅広い解釈ができる言葉を使ったことは本当によかったと思っています。

 たとえば操縦の愉しさって、必ずしも数値性能で測れないというか、感性の部分がありますよね。開発の方法もかなり変わったのでしょうか。

 当社は今年、新たなプラットフォーム(車台)「スバルグローバルプラットフォーム」を開発したのですが、技術者に話を聞いたところ、まさしくそのことを言うんです。

 安全性能は数値で把握しやすいため、開発においては、各数値を高めていくことが求められます。

 一方、運転した時の心地よさや走り味などは感性による部分が大きいですから設計に落とし込むのは難しい。担当の技術者は「感性をデータにすることに苦労しましたが、今回、初めてプラットフォームの設計に反映することができました」と。面白いこと言うなあと思いました。

 感性ってデータ化できるものなんですか。

 「開発するのに10年かかりました」と言っていました(笑)。地道にコツコツと、当社の技術者らしいです。

「安心と愉しさ」と定義したことで、すべての性能に優れた没個性的な製品ではなく、部分的な性能の際立った製品を求めるようになったのでしょうか。

 従来の当社の開発方法は、燃費、コスト、環境などの6軸を棒グラフで数値化して評価していました。それぞれの項目でライバルを100点満点として当社製品は何点かという議論をしていたのです。

 しかし、6軸で比べてしまうと、当社の規模では大手にかなわない。たとえば、環境ではA社、コストではB社が一番とかなるわけです。こんな議論をすれば、自社の劣った点ばかりに議論が集中し、会議が暗くなります。

 ところが「安心と愉しさ」という2軸だけにすれば、「衝突しない車がつくれるかも」とか言い出す社員が出てきたり、会議も明るくなる。

 もうね、コストで他社に劣るのは仕方がないと割り切ったんです。とにかく欠点よりも美点を見出す、前向きな思考回路に変えようと。

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「トップ・マネジメントの教科書」人と組織を動かすリーダー論

組織メンバーの自発・自律的な自己変革によって会社をよくしたいと思うならば、アメとムチ、命令と統制(コマンドアンドコントロール)など時代遅れの経営慣行――心理学や社会学の実験が証明しているように、これらは逆効果である――を排し、21世紀にふさわしいマネジメントを発明すべきである。それは、経営の意志の問題にほかならない。

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