民主党代表選の最中、経営再建中の日本振興銀行が9月10日、ついに経営破綻しました。同行が、2004年4月に中小企業向け融資専門の銀行として、まさに鳴り物入りで開業した当時、私はまだ銀行に勤務していましたが、「中小企業の救世主」と同行を持ち上げる世の中の雰囲気に、強い違和感を覚えたものでした。

 日頃、銀行は「雨の日に傘を取り上げ、晴れた日に傘を貸す」などと揶揄されるだけに、融資を受ける側から見れば、もしも雨の日(不況時や業績悪化時など)に積極的に傘(資金)を貸し出してくれる銀行があれば、確かに理想的だとは思います。

 一方、今回の日本振興銀行の経営破綻では、「1預金者あたり[元本1000万円+利息]までの預金は保護されるものの、それを超える部分は保護されない」という『ペイオフ』が初めて発動されるケースとなりました。まさに預金者の自己責任が問われる初のケースとなったのです。こうした事態を垣間見ると、預金者側から見れば、「預けたお金はきちんと運用してくれよ」という気持ちになるものだと思います。

日本振興銀行が経営破綻した
最大の理由とは?

 このように、資金の受け手である「融資を受ける側」と、資金の出し手である「預金者や株主側」、両者の主張をバランスさせていくことが、まさに銀行の金融機関としての役割です。しかし、その作業はそう容易なものではありません。残念ながら、商業銀行を正義感で設立できたとしても、それを経営していくことは非常に難しいのです。

 当時、私が日本振興銀行に違和感を覚えた最大の理由は、「普通預金などの資金決済機能を持たず、定期預金で資金を集めて融資する」という同行の仕組みそのものでした。「定期預金→融資」というのは、一見単純明快で辻褄が合うように思えますが、収益機会が限定され、かつ自転車操業的で、とても長続きしないように思えたのです。

 このことは、1995年に経営破綻したコスモ信用組合が当時私の担当地盤内にあり、破綻前に高金利の定期預金を集めまくっていた状況を間近で見ていた影響もあるかもしれません。また、より本質に立ち返れば、日本振興銀行破綻の最大の理由は、「決済機能を持たない」=「資金循環の仕組みをつくることができない」ということにあったと思います。

 銀行の資金循環とは、個人取引であれば、給与口座や年金受取口座に指定してもらうことで「入金」の仕組みをつくり、公共料金やカード決済などで「出金」の仕組みをつくってもらうことが基本です。つまり、「入金と出金の両方を押さえる」ということです。