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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

日本振興銀行の経営破綻から学ぶ、「辻褄合わせ」の限界

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第25回】 2010年9月14日
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 民主党代表選の最中、経営再建中の日本振興銀行が9月10日、ついに経営破綻しました。同行が、2004年4月に中小企業向け融資専門の銀行として、まさに鳴り物入りで開業した当時、私はまだ銀行に勤務していましたが、「中小企業の救世主」と同行を持ち上げる世の中の雰囲気に、強い違和感を覚えたものでした。

 日頃、銀行は「雨の日に傘を取り上げ、晴れた日に傘を貸す」などと揶揄されるだけに、融資を受ける側から見れば、もしも雨の日(不況時や業績悪化時など)に積極的に傘(資金)を貸し出してくれる銀行があれば、確かに理想的だとは思います。

 一方、今回の日本振興銀行の経営破綻では、「1預金者あたり[元本1000万円+利息]までの預金は保護されるものの、それを超える部分は保護されない」という『ペイオフ』が初めて発動されるケースとなりました。まさに預金者の自己責任が問われる初のケースとなったのです。こうした事態を垣間見ると、預金者側から見れば、「預けたお金はきちんと運用してくれよ」という気持ちになるものだと思います。

日本振興銀行が経営破綻した
最大の理由とは?

 このように、資金の受け手である「融資を受ける側」と、資金の出し手である「預金者や株主側」、両者の主張をバランスさせていくことが、まさに銀行の金融機関としての役割です。しかし、その作業はそう容易なものではありません。残念ながら、商業銀行を正義感で設立できたとしても、それを経営していくことは非常に難しいのです。

 当時、私が日本振興銀行に違和感を覚えた最大の理由は、「普通預金などの資金決済機能を持たず、定期預金で資金を集めて融資する」という同行の仕組みそのものでした。「定期預金→融資」というのは、一見単純明快で辻褄が合うように思えますが、収益機会が限定され、かつ自転車操業的で、とても長続きしないように思えたのです。

 このことは、1995年に経営破綻したコスモ信用組合が当時私の担当地盤内にあり、破綻前に高金利の定期預金を集めまくっていた状況を間近で見ていた影響もあるかもしれません。また、より本質に立ち返れば、日本振興銀行破綻の最大の理由は、「決済機能を持たない」=「資金循環の仕組みをつくることができない」ということにあったと思います。

 銀行の資金循環とは、個人取引であれば、給与口座や年金受取口座に指定してもらうことで「入金」の仕組みをつくり、公共料金やカード決済などで「出金」の仕組みをつくってもらうことが基本です。つまり、「入金と出金の両方を押さえる」ということです。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
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ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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