日本ではじつは
フィギュアが売れない

──海洋堂が目指す未来は、どこにあるのでしょうか。

 1999年から2006年後半までの食玩ブームのあいだが、僕らとしては一つの戦いであったんだけども、最近はもう、敗北宣言じゃないですが、目指した未来は、来んかったなと。

 チョコエッグが3年間で1億3000万個売れた、ほかのシリーズも、1000万個単位で売れたわけですよ。

 食玩で目指したものというのは、それをきっかけに、フィギュアをもっともっと普通に買ってくれる時代。いいものさえつくれば、オマケではない普通のフィギュアが、動物や恐竜ものなら1万個、特撮ものなら3万個ぐらい売れて、メーカーとして淡々と商売できるという時代をつくりたかったんだけども、それはまだ来てない。

「スターウォーズ」のフィギュアなんて、もう今は日本製のものが1個もなくてアメリカから輸入されてるんですが、売れても数千個です。

 アメリカはだいたい1つのフィギュアが30万個売れる国なんですね。ハリウッド映画もののフィギュアがあったら確実に買うんです。イチローでも、アメリカやったらフィギュアになるんですよ。日本やったら売れへんのですよ、野球フィギュアなんて。

 だからまだまだね、フィギュアを売るために僕らは戦い続けなあかんわけですわ。

 その戦場として、今は秋葉原しかないのが問題なんです。アキバは秋葉原にしかないんです。ほかにないんですよ。日本にアキバが10個あれば僕らは安泰なんですわ。アキバは1個しかないんですよ。それが悲しい。

 海洋堂がこれから戦わなあかん敵というのは、じつは日本なんですな。フィギュアが嫌いな日本人に、いかにフィギュアを買ってもらうかという戦いです。 

宮脇修一・海洋堂社長インタビュー<br />「敵はフィギュアの嫌いな日本、<br />僕らは戦い続けなあかん」

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特集班/「週刊ダイヤモンド」編集部・浅島亮子、遠藤典子、河野拓郎、清水量介、野口達也、山口圭介、脇田まや