最近、企業にとってCSRはホントに必要なのか、ということについて、あらためて考え直している。前回もお伝えした通り、「9割の企業のCSR部の人は、イヤイヤ仕事しているのでは?」という報告も寄せられているし、社員のほとんどが自社のCSR活動のことを知らないというCSR担当者の悩みもよく聞く。大多数の日本企業のCSR担当の人は、多くの悩みを抱えたまま日々の活動を続けているのかもしれない。
しかし、悩みを抱えるCSR担当者の皆さんには申し訳ないが、筆者がより関心を持っているのは、従業員の皆さんのことである。それは「CSRは、従業員のシアワセに貢献しているのだろうか?」ということだ。
社員は自社のCSRに対し、
本当はどう思っているのか?
日本企業の正社員の2割はうつ病だといわれるくらい、多くの企業人はあまりシアワセでない状態で仕事をしているらしい。特に営業などのプロフィット・センターの社員などは、デフレも止まらず景気も低迷している中で毎日、毎日、営業部長などから「売り上げを上げろ」とプレッシャーをかけられ、雨の日も風の日も外回りをして頑張っている。
消費財メーカーなどは、たとえば1個50円とか100円の商品を売って数千億円の売り上げをあげるわけだが、それは商品開発から営業、そしてお客様窓口に至るまで、数多くの社員の血と汗と涙で稼いだ売り上げだ。
そうして稼いだお金が、名前も知らないようなどこかのNPOへ、100万円だか1000万円だかの寄付として使われるとしよう。さらにCSR報告書などには、「わが社も熱心にCSRに取り組んでいます」などという社長のコメントが載っているとする。しかしそれで、社員はシアワセを感じたりするのだろうか。自分たちが死にものぐるいで稼いだ金がNPOに流れていくことに、何かの意味を感じることができるだろうか。
かつて、多くの企業が財テクと称して、社員が地道に稼いだ金を投機に使い、100億円単位の損失を出していたが、その時に感じた絶望感や徒労感と同じ感覚を、いまの社員はCSRに感じていないだろうか。ましてや、労働人口の3分の1にものぼるという非正規雇用の従業員は、企業の植林活動やNPOへの助成金をどう感じているのだろうか。そんなことに思いをはせていると、「CSRは、本当に従業員をシアワセにしているのか?」と疑問に思うわけである。
CSR報告書や社会貢献に関する本を読むと、それこそ判で押したように「持続可能性」という言葉が出てくる。しかし、たとえば非正規雇用のシングルマザーなどの弱い立場の従業員にとっては、100年後の地球の持続可能性より、明日の子どもの給食費の方が切実な問題なのは議論を待たない。筆者はCSRを考えるとき、この2つを分けて考えることはできないし、分けて考えるべきではないと思っている。
CSRで従業員はハッピーになってないのではないか――。筆者が「CSR3.0」などと言い出した背景には、実はこのような問題意識がある。
社員をシアワセにする
「儲かるCSR」とは?
企業の従業員のシアワセの源泉は「儲け」である。売り上げが上がっていれば、従業員は企業の成長性に期待ができるし、給料が上がるかもしれないという希望も持てる。なにより、企業の持続可能性を期待でき、自分たちの生活の持続可能性を信じることができる。