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医療・介護 大転換

日本も参考にしたい米国の最新認知症ケア事情

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第57回】 2016年7月6日
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高齢者ケアが継続的に行なわれる集合住宅

 米国が発祥のCCRC(Continuing Care Retirement Community)を米国東部海岸で見てきた。ボストン、その隣のケンブリッジ、そしてニューヨークの北のコネチカット州などで5つのCCRCを回った。

 CCRCとは、継続的なケアが成される共同住宅である。健康な時に移住し、介護や医療が必要になれば同一敷地内の別の建物に移り、継続的な生活サービスやケアを受け続けられる引退した高齢者のための集合住宅のことだ。

今回、筆者が視察に訪れたCCRC。共用スペースは懐かしい街並みを再現したアーケード付きの商店街になっている

 全米に約2000ヵ所あり、約75万人が入居していると言われる。日本では、首都圏の高齢者に対して、医療と介護の施設や在宅サービスが今後大幅に不足するため、地方への移住を政府が呼び掛け、その受け皿として日本版CCRC構想が浮上している。だが、本場のCCRCとはどのようなものか、あまり知られていない。そこで、この6月下旬から視察の旅に出た。

 心身の状態によって入居するCCRCの集合住宅はいくつかに分かれている。まず、最初に健康な時に入居する自立型住まいのIndependent Living(インデペンデント・リビング)。食事のほか、ジムやプールなど運動設備、絵画や工芸品作りのアトリエ、それに図書室、映画鑑賞室などが備わる。健康を維持しながら娯楽や文化を存分に楽しもうというアメリカ人の気質がよく表れている。

 次に、入浴や着替えなど生活支援が一部必要な人が暮らすのがAssisted Living(アシステッド・リビング)。杖や歩行器、あるいは車椅子を使って食堂に赴き、自分で食事はできるレベルの人たちが入居する。日本の要介護判定では、要支援者や要介護1と2ぐらいまでの軽度者だろう。

 そして、日常生活のほぼ全体に渡って介護が必要される状態の人が入居するのがNursing Home(ナーシングホーム、Skilled Nursing)。日本の特別養護老人ホームにあたる。要介護3以上の中重度者が対象となる。

 加えて、認知症の人たちだけが10数人で入居するMemory Support(メモリーサポート)が、Assisted Living やNursing Homeの建物内に独立したスペースで確保されている。

 これらの入居施設が以前はバラバラに、異なる事業者によって運営されていたが、1980年代からひとつの敷地の中に集めて、同じ事業者が手掛けるようになった。つまり、ケア(Care)が継続的に(Continuing)行われる集合住宅(Community)ということで、総称してCCRCと呼ばれる。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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