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社外プレゼンの資料作成術
【第16回】 2016年7月11日
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前田鎌利

事業スピードが「倍速」になる社内プレゼンの秘密
Yahoo!JAPAN170人部門のトップが明かす!(1)

Yahoo! JAPANのエリア・オンライン営業本部が、その事業スピードを加速させている。その大きな要因となったのが、社内プレゼンの統一化だ。『社内プレゼンの資料作成術』の著者・前田鎌利氏のノウハウを組織的に導入。そのことによって、メンバーの資料作成時間が激減したうえに、意思決定に必要な情報が簡潔にまとめられたプレゼンが増加したため、組織の意思決定のスピードと質が格段に上がったためだ。前田氏が、同本部長の福山広樹さんと、同部署で人材開発を担当する櫛屋昂平さんに、その秘訣を聞いた。(構成:崎谷実穂)

研修を受けて、プレゼン資料がガラッと変わった

前田鎌利さん(以下、前田) 以前、Yahoo! JAPANさんでプレゼンテーションの資料作成術の研修をやらせていただきましたが、なぜ、Yahoo! JAPANの社内でこうした研修をおこなうことになったのでしょうか?

福山広樹(ふくやま・ひろき) 2007年オーバーチュア株式会社、翌2008年ヤフー株式会社へ入社。同社入社後、地域・SMB向けのビジネスインフラを構築(地方・中小の広告代理店を中心に、全国約1000社の代理店網を構築。)2015年に地域・中小事業領域を対象とした営業本部を発足し、本部長へ就任。現在、一般社団法人中小・地方・成長企業のためのネット利活用による販路開拓協議会の理事も務める。

ヤフー 福山広樹さん(以下、ヤフー・福山) 私は、Yahoo! JAPANの法人営業部門をマネジメントする立場にいるんですが、現場から、プレゼンについての研修を受けたいと声が上がってきたんです。Yahoo! JAPANは、「課題解決エンジン」ということをミッションとしています。我々の部署では、お客様のビジネス上の課題を解決することがミッションだということです。そのためには、当たり前のことですが、お客様に解決策を提案しなければいけない。そこに日々苦労があるのだろうと思いました。また、社内プレゼンにも課題がありました。私自身、本部長として部下からプレゼンを受けて意思決定をする際に、わかりにくいなと感じることが多くありました。

【編集部注】Yahoo! Japanエリア・オンライン営業本部は、全国に4拠点(札幌・名古屋・大阪・福岡)を展開し、地域事業者・中小事業者・広告会社を対象に、オンラインのインフラを活用し、デジタルマーケティングのさまざまな課題に対するソリューションを提供する部門。近年は地方自治体とも連携し、IT人材の育成にも取り組んでいる。

ヤフー 櫛屋昂平(以下、ヤフー・櫛屋) 私は営業部隊の人材開発を担当しているのですが、その立場で現場を見ていて、プレゼン力の向上が必要だと感じていました。私はもともと『社内プレゼンの資料作成術』を購入して何度も読んでいたので、著者の前田さんに講師として来ていただけないかと依頼したんです。

前田 お声がけいただけて、うれしかったです。印象的だったのは、研修をオンラインで地方の拠点と結んで実施したこと。それも一ヵ所ではなく、いくつかの拠点を同時につないで開催していましたよね。

櫛屋昂平(くしや・こうへい)2008年新卒入社。「Yahoo!グルメ」「Yahoo!ファイナンス企業情報」の新規開拓営業に従事。その経験を生かし、「Yahoo!ロコ」プロモーション企画担当としてJCB、飲食店様と共にO2O実証実験、高円寺商店街と阿波踊り祭の連携企画に軸足を移す。その後、前社長のもとに作られたプロジェクト「Yahoo!クラウドソーシング」リリースに向け営業企画を担当。現在は代理店営業として中小代理店700社を担当。

ヤフー・櫛屋 はい。北海道、名古屋、大阪、福岡の4拠点ですね。全体で60人ほどが参加していたと思います。

前田 オンラインで研修をやると、どうしても対面でやるよりぎこちない雰囲気になってしまったりするのですが、Yahoo! JAPANさんの場合そんなことはなくて、皆さん積極的に参加してくださいました。オンライン会議などに慣れていらっしゃるんですね。また、研修に部門トップである福山さんが参加されていたのも、とてもよかった。

ヤフー・福山 私も『社内プレゼンの資料作成術』を、読んでいたんですよ。だから、著者に会ってみたくて(笑)。プレゼンには慣れているつもりでしたが、改めて気づくこともたくさんあり、とても参考になりました。

前田 プレゼン資料というものは、組織的に基準を設けて統一していくことに大きな意味があります。社員によってバラバラな資料だと、決裁者は意思決定に必要な情報がどこに書いてあるのか、いちいち探さなければならない。これが、意思決定のスピードと質を落としてしまうんです。だから、組織のトップの方が研修に出席することによって、組織としてプレゼン資料に共通理解をもつことがきわめて重要なんです。実務への反映具合もぜんぜん変わってきます。

ヤフー・櫛屋 たしかに、そうですね。前田さんの研修を受けてから、おもしろいくらい資料のテイストが変わりましたね。「グラフを左に配置して右にメッセージを出す」「ネガティブ表現は赤文字して、フォントも明朝に変える」など、細かいテクニックをすぐにみんな取り入れていました。

●グラフは左、メッセージは右

ヤフー・福山 あと、「課題」→「原因」→「解決策」→「効果」というストーリーに則った、論理的なプレゼンが多くなりましたね。

ヤフー・櫛屋 こういうフレームに合わせて資料をつくるとわかりやすい、ということ自体を知らなかった人も多かったんです。型を教えていただくことで、メンバーの資料作成の時間はぐっと縮まったと思います。それが、組織全体で統一できた効果は大きいですね。 

決裁効率が上がった結果、「組織力」が最大化される

前田鎌利(まえだ・かまり) 株式会社 固 代表取締役。1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。各種 営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会なども担当。2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも多数担当した。その後、ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、株式会社ベネッセコーポレーション、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。著書に、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)。著者公式サイト:http://www.kamari-maeda.com/

前田『社内プレゼンの資料作成術』は、上司など意思決定者に向けたプレゼンについての本です。ご自身が意思決定者である福山さんは、どういう変化を感じられましたか?

ヤフー・福山 ひとことで言うと、楽になりました(笑)。これまでは部下からのプレゼンで、「何を言っているかよくわからないけれど、最後まで聞かなきゃ悪い」と思って延々と時間をとられるなど、ストレスもあったんです。それに、どこを見れば何が書いてあるかも統一されているので、パッパッと意思決定できるようになる。私の意思決定の時間がグッと減ったし、意思決定件数が増えることでメンバーのストレスも減ったんじゃないでしょうか?

前田 これって、自分が上に立つ立場にならないとわからないんですよね(笑)。

ヤフー・福山 意思決定の数が増えたということは、つまり、お客様の課題解決の量が増えているということですよね。われわれのミッションをより遂行できるようになったわけですから、それは、非常に価値のある変化だと思います。

前田 ちなみに、福山さんは、1日何件くらいの決裁案件を抱えているんですか?

ヤフー・福山 1日にならすと、5〜6件はありますね。

前田 それは大変ですね……!

ヤフー・福山 しかも、月のほとんどは出張していますので、東京のオフィスに戻ってきた合間の時間で、提案を受けているわけです。だから、時間が長いと途中で打ち切ってしまうことも多かった。現場としては思い入れもありますので、たくさんの情報を伝えたいと思ってしまう。でもこちらとしては、なぜ課題が発生していて、何をすれば解決できるのか、その提案の骨子を端的に知りたいんです。

前田 短時間のプレゼンで、細かい数字をズラズラと見せられても判断できないですよね。

ヤフー・福山 詳細は私がもっと掘り下げて知りたい、と思った時に見られるようになっていればいいんです。つまり、アペンディックスでバックデータをもっておいてもらえればいい。プレゼンは、誰に何を伝えるかということが明確でなければいけない。そこを論理的に資料に落としてくる人が多くなって、非常にやりやすくなりました。

 具体的に言うと今まで20ページ以上あった資料が、10ページ以下になった。前田さんの本では「適切なスライド数は5〜9枚」とはっきり書いてありますからね。さらに、短く要点をまとめることによって、私がどういう軸で決済を判断しているのかが、明確になったんです。

前田 なるほど。それは重要なポイントですね。決裁者が意思決定するために必要不可欠な情報は何なのか?それをメンバー全員が把握している組織とそうでない組織では、意思決定のスピードと質に恐ろしいほどの差が生まれます。

ヤフー・福山 はい。前田さんの資料作成術を取り入れているかいないかは、採用される件数を見れば一目瞭然。自然と、みんなが前田式のプレゼン術に切り替えてくれるようになりました。それに、ある一定のフレームが理解できると、自分の作った資料に自信が持てますよね。自分の提案に自信がもてるようになると、仕事そのものにも自信が備わってくる。そして、そんなメンバーが増えると、組織全体も力強くなる。これも大きな変化のひとつですね。

ヤフー・櫛屋 実はですね、福山さんは、プレゼン資料つくるのがうまいんですよ。だから、部下としては自分の拙い資料を見られるのは緊張するというか……(笑)。このプレッシャーも、部下には“いい薬”になっているんじゃないでしょうか。

ヤフー・福山 私もつい、「この資料、どのくらい時間かかった?」とか聞いてしまうんですよね(笑)。それで、何日もかかったと聞くと、「その時間がもったいない」と思ってしまう。でも、どう作るのが正解なのかを知れば、自分の資料に自信が持てる。結果的に、堂々とプレゼンする人が増えたように思います。あと、提案資料だけでなく、議事録などの資料もポイントをおさえた論理的なものになって、共有が楽になりました。

前田 日々の業務の基本である「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」も効率化されたんですね。

ヤフー・福山 これまでは、ダラダラ長い文章で書かれていたり、細かい数字がみっちり入ったエクセルがそのままついていたりしました。でも、シンプルにまとめる人が増えて、外出先でも確認しやすくなったんです。現在は、スマートフォンやタブレットなど、PC以外のデバイスでも資料を確認することがあります。外で見ることを考慮して簡潔にまとめてもらえると、とても助かるんです。

上司と部下の「信頼関係」によって、意思決定がさらに向上

前田 これは、IT活用が進んでいる企業ならではの改善点ですね。この資料作成術の研修は、福山さんの統括するセクションの個別研修としておこないました。年次やマネジメント層といった区分けでなく、部単位でおこなう研修って珍しいと思うのですが、Yahoo! JAPANさんではよく実施されているのでしょうか。

ヤフー・福山 Yahoo! JAPANはカンパニー制を導入しており、カンパニーごとに人事部を配置しています。ニュースや天気、eコマース、決済・金融サービスなどさまざまな領域の事業をしているので、組織における課題もさまざまです。そのため、カンパニーごとに人事部を配置することで、それぞれの組織の課題に向き合うことができる。だから、こうした研修が実現したんです。

前田 そうしたYahoo! JAPANさん独自の人材育成の制度は、他にありますか?

ヤフー・福山 特徴の一つとしては、「1on1 ミーティング」という制度があります。これは、毎週、上司と部下が30分ほど1対1で話す機会を設ける、というものです。通常の業務連絡とは少し離れ、将来何がしたいかや、そのためにどんな仕事をしたいかについて話します。また、部下に対し、日ごろの業務の振り返りや内省を促し、日常の業務経験から効率よく学んでもらうための時間でもあります。

前田 なるほど。それも、部下の方にとっては「自分のやりたいことを伝える」という、ひとつのプレゼン機会かもしれませんね。

ヤフー・福山 こちらとしても、経営や自分の「考え」を伝えるいい機会でもあるんです。「これについてどう考えていますか?」「今私がやろうとしていることは、会社の方針と合ってますか?」などと聞かれることもあるので。目線合わせや軌道修正ができる時間ですね。

前田 部署の飲み会よりも、いい効果がありそうです(笑)。

ヤフー・櫛屋 業務の時間内でやりますので、時間に対しての意識は高まりますよね。この30分を大切にして、本質的な話をしよう、と。それが飲み会とは違う効果があると考えています。

前田 こうした施策で日頃から信頼関係が築けていると、決裁時の意思疎通もスムーズになりそうですね。

ヤフー・福山 それはあると思います。相手の考えていることがわかり、何の仕事をしているかも知っているので、資料のタイトルを見るだけで何の案件かわかります。おのずと、資料の中で見るポイントも決まってくる。逆に、決裁の効率が上がったことで、現場との信頼関係も築きやすくなったと感じています。いつも「時間がないから後で」と言っていると、現場と距離ができてしまう。すばやく、正確な判断をすることによって、信頼を得られるようになるんです。

(つづく) 

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前田鎌利 

まえだ・かまり 1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当した。その後、ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍。著者のプレゼンテーション術を実施した部署で、決裁スピードが1.5~2倍になることが実証された。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、株式会社ベネッセコーポレーション、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。


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