ビジネスパーソンは「論理的思考」を鍛えることが必須とされています。しかし、「論理的思考」のみに偏重するがために、ゼロイチ(イノベーション)が起きにくくなっているのではないか、とPepper元開発リーダー・林要さんは言います。どういうことか?林さんの著書『ゼロイチ』から抜粋してご紹介します。

「論理的思考」が“新しいアイデア”をつぶす?!

 

人間はひらめく生き物である

 人間はひらめく生き物です。
「あ、そうだ!」と思いもよらないアイデアが瞬間的に思い浮かぶ。
「あ、そうか!」とずっと考えてきた問題がパッと解ける。

「どうして、そのアイデアが浮かんだのか?」と聞かれると、うまく答えられないけれど、なぜかピンと来る。そんなちょっと不思議で、かすかな驚きを伴う体験を、僕たちは日々繰り返しています。

 たとえば、行き詰まった会議の空気を変えるような冗談を思いつく。これも、ひらめき。もしくは、料理でいつも使わない食材が意外に合いそう、と使ってみる。これも、ひらめきです。

 これらは、小さなひらめきですが、脳内で起こっている現象そのものは、ニュートンが万有引力を発見した瞬間の”超特大のひらめき”と大差ありません。

 僕たちの脳内には、千数百億個とも言われる神経細胞(ニューロン)が複雑に絡み合った神経細胞網(ニューラルネットワーク)が存在します。その神経細胞網が、ほんの0.5秒ほどの間に一気に活性化して、過去に脳内に蓄積されてはいたけど、それまでにつながりのなかった記憶(情報)同士が結びつく。この新たな結びつきが脳にとって新鮮な刺激となって、神経伝達物質であるドーパミンが放出されるのです。

 ドーパミンとは報酬系の神経伝達物質。これが放出されることによって、脳は「快感」という報酬を与えられます。だから、ひらめきは気持ちがいい。そのように、僕たちの脳はできているのです。

 この快感は、皆さんも経験があるはずです。
「ああ、そうか!」「わかったぞ!」と膝を打つときの感覚。とても強くて深い快感ではないでしょうか?