6月15日、行政刷新会議で挨拶する菅直人首相。職員の役員出向を閣議決定したのは、1週間後のことだった
Photo by JIJI

 改革は、本当に実現するのか。厚生労働省は、9月13日から「独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会」をスタートさせた。8人の外部委員は、所管する法人の統合や民営化、さらには廃止と地方移管も含め年内にも結論を下す。

 これまで、行政刷新会議と同省により事業仕分けが実施されたが、成果は微々たるものだった。独法(20法人)を例にとると、職員の削減数は2011年度が前年度に比べて60人、国の財政支出の削減額は75億円にとどまる。

 加えて、同省が所管する公益法人に天下っている職員数は、1401人(280法人)に上り、年間給与額(09年度)が1000万円以上の職員は124人に達する。なかには、課長補佐から事務局長に天下り、年間1388万円の給与を手にする猛者もいるほどだ。

 国としても、ムダの排除に向けて、組織そのものに大ナタを振るう必要に迫られている。しかし、その先行きはきわめて厳しい。民主党は「天下りの根絶」を強く訴えていたが、菅政権がこの6月の閣議決定で省庁から独法などへの現職出向を認めたからだ。

 鳩山政権では、「公務員OBが役員に就任しているポストについては、公募による後任者の選考」を決めたが、6月の閣議で「職員が役員出向する場合は公募の対象としない」と“実質的な天下り”に道を開いた。さらに、これまで役員出向の対象外だった民間法人化された特殊法人などにも対象を広げるなど、やりたい放題である。

 今後、厚労省が所管法人の数を減らしたとしても、現職出向の撤回がない限り、法人改革は骨抜きで終わるのが確実だ。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)

週刊ダイヤモンド