シェアを回復したサッポロだが、約12%のシェアでは決して安泰とはいえない Photo:Bloomberg/gettyimages

 7月12日、ビール、発泡酒、第三のビールを合わせた「ビール類」の上半期課税出荷数量(1~6月)が発表された。大手4社のシェアを見ると、業界2位のキリンビールは前年同期比1.9%減の32.1%で過去最低。アサヒビール(39.2%)、サントリービール(16.0%)、サッポロビール(11.9%)の3社がシェアを伸ばした。

 数字上はキリンの独り負け。だが、残りの3社がたっぷりと勝利の美酒に酔えるわけではない。

 ビール回帰──。年初の事業戦略発表会で、各社は今年の方針をこう掲げた。その点では、美酒を手にしたのはサッポロだけだ。

 ビールカテゴリーでシェアを伸ばしたのはサッポロとサントリーの2社。だが、サントリーは昨年9月に発売した大型商品の「ザ・モルツ」の増分がある。

 つまり、既存ブランドだけでビール回帰を遂行できたのはサッポロだけで、同社は「黒ラベル」の好調により、ビールでのシェアを0.7%増やした。黒ラベルは基盤の弱かった西日本で販売増を果たし、4月発売のブランド初の派生商品「黒ラベルエクストラブリュー」が寄与した格好。

 だが、そんなサッポロも決して安泰とはいえない。ビール類は巨額の設備投資が掛かる装置産業で、「10%のシェアを割ると採算が合わなくなる」(アサヒ幹部)といわれる。サッポロは、昨年のビール類のシェアが11.5%で危険水域。今上半期のシェア回復で「何とか一命を取り留めた」(業界関係者)にすぎない。