現代の子どもたちが
「発達段階4」へと成長しづらい理由

「発達段階の違いによって、どちらが優秀というわけではありません」(加藤)

加藤 実は、「発達段階4」の人は自己主張が強かったりするので、上司が「発達段階3」だと非常に扱いにくい存在なんですよ。どちらが優秀、というわけではないのですが。

秋山 発達段階ももちろんですが、社会人としての経験や実務的な能力、器の大きさがないと、「発達段階4」の部下は相当手ごわい相手になるでしょうね。それに、今の時代、子どもの世界にも親が出しゃばっていくほどなので、子ども同士で秩序を形成する機会が奪われているんですよ。

 たとえば、チームで誰が出場するか、どこのポジションを任せるかも、子ども同士ではなく大人(監督や親)が決めてしまうというケースが多い。大人が決めた秩序は子どもにとって絶対的な存在だから、「秩序は壊せないものだ」という刷り込みが生まれてしまうんですよね。そんな子どもが大人になって、「発達段階4」になるのは相当難しいと思います。どちらかというと「秩序や権威を道具的にうまく使って自分を有利にする」という「発達段階2」の人が増えてしまう。

加藤 発達理論の観点から見ても、その点はとても重要ですね。子どもの頃にケンカをして、格闘してでも秩序を作るという経験は、成人期以降の成長にも強く影響を与えると思います。秩序を自分たちで作るという経験が剥奪されている場合、「秩序は壊せないものだ」という思い込みを生み出すことにつながってしまうと思います。秩序を作っていくという経験がない子供たちがそのまま大人になってしまうと、それは発達段階3で留まり続けることにつながってしまうかもしれません。

秋山 キーガンの師匠であるコールバーグも、「権威者としての親や教師が、子どもの世界に介入すること」を戒めていますよね。唯一そういった大人の干渉を免れているのは、オタクの世界。あそこでは自分たちで秩序を作っているから、彼らのアイデアはやはり飛び抜けたものがある。

加藤 その分析は面白いですね。私も一時期、オタクの自律性の高さについて考えたことがあります。おそらくオタクの人たちは、独自の秩序を自分たちで絶えず作ろうとしているため、独創的なアイデアがどんどん生まれてくるのかもしれませんね。

“常識の通じない世界”でこそ
人は初めて成長できる

秋山 組織の秩序も同じですよね。単なる習慣として続けているものなのか、企業理念に紐づいているのか、何かにとって効果的だから理由があって変えてはいけないものなのか、その判断ができないといけない。でも、私の経験上、組織の秩序の7~8割は、どうでもいいといったら語弊がありますが、変化させても困らない「単なる習慣」なんです。

「前の社長がダメだと言った(らしい)こと」「たまたま最初に座った席順」とかね。一度秩序を壊したり、作り上げたりしたことがある人には崩していいものか、いけないものかの違いがわかるから、「当たり前」と言う名の習慣を盲目的に守ろうとする人達の世界にも、きちんと対抗できます。

加藤 崩していい秩序なのかそうでないものなのかの線引きができるのは、「発達段階4」の人の特徴だと思います。話が少し変わりますが、発達心理学の世界で有名なピアジェは、早期英才教育を受けた人間の成長が20歳を超えた頃にぴたりと止まってしまう「ピアジェ効果」について語っています。

 また、発達心理学では、大人になってからも成長するという考えがベースにあります。ですから私は、子どもの頃の成長は強制的なものではなく自然なほうがいい、大人になってからも人は十分成長すると考えていますが、秋山さんはご経験からどう思われますか?