日銀はマイナス金利のさらなる拡大に踏み切るのか

 先の参院選の結果、自民党は単独過半数を占めた。安倍首相は「アベノミクスが信認を得た」として、アベノミクスのさらなる強化を進めようとしており、マイナス金利の拡大も検討されている。アベノミクスの金看板である金融政策は、マイナス金利にまで至り、もう限界に来ている。これは地銀をはじめ、銀行の経営の悪化をもたらすもので、大変危険な政策だ。

 今後、7月28日~29日に開催される次回の日銀金融政策決定会合において、さらなる金融緩和の導入が検討される。具体的にはマイナス金利の拡大(深堀り)、購入国債金額の拡大(量的緩和の強化)、ETF(上場投資信託)の購入金額の拡大などである。それぞれに問題があるが、特にマイナス金利の拡大は、銀行により深刻なダメージを与える。

銀行、とくに地銀が危ない
深刻なマイナス金利の副作用

 今年の1月29日に開催された金融政策決定会合で、日本銀行はマイナス金利政策の導入を5対4の賛成多数で決め、2月から実施した。アベノミクスにおける量的金融緩和政策をさらに進めた形である。マイナス金利の導入目的は、アベノミクスの基本方針と同じく、自国通貨安に誘導すること(それによって景気を良くし、またインフレにすること)、また銀行の日銀当座預金における余剰資金を使わせる、つまり、その資金を融資に回させる、あるいは国債等の証券に投資させることであった。

 しかし、まず為替については米国など海外の要因の影響が大きいせいもあり、逆に円高に向かった。また銀行業界は、マイナス金利の副作用ともいうべき深刻な状況に陥っている。

 現在、銀行では、預金のうち貸出に回る比率(預貸率)が約7割程度(メガバンクに限れば約6割程度)である。日本は景気が良くないので資金需要が低い。しかも、貸出競争の激化で預貸では「逆ザヤ」になっている銀行も多い。要は、最近、貸出では儲からないのである。

 そのため銀行は近年、余剰資金でもっぱら20年物を中心とした長期国債を購入し、収益源としていた。つまり、銀行の収益のほとんどは長期国債の収益に頼っていたのである。特に地方銀行は、都市銀行(メガバンク)のように海外業務で収益を上げることもできず、主たる収益源が国債の利子だったわけだ。

 2月に日銀当座預金の一部がマイナス金利になったが、同時に国債についても期間が短い物から徐々にマイナス金利になっていき、最近では20年物までがマイナス金利になった。これは日銀が、新発債が40兆円しかないにもかかわらず、80兆円も国債を買っていることも一因である(さらに今後の経済政策の財源として、政府は建設国債の追加発行を検討している。また、今回、検討されている国債購入額の増額は、その建設国債を吸収するものと考えられる)。