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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

なぜ韓国は対北朝鮮安保で日本と素直に協力できないのか

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第8回】 2016年7月25日
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ワシントンで開催された核セキュリティサミットでの安倍晋三首相と朴槿恵大統領。韓国の安全保障の根幹には日米韓の協力体制が欠かせない Photo:Yonhap News/AFLO

北朝鮮の核・ミサイル開発と中国の曖昧な姿勢

 今年5月、36年ぶりに開かれた朝鮮労働党大会において、金正恩委員長はその活動報告の中で、「(北朝鮮は)責任ある核保有国だ」「核強国の地位に堂々と上り詰めた」と強調するとともに、「核保有国になったのだからそれに見合った対外関係を発展させる」として、核開発が進んだことを梃子に、米に北朝鮮の核保有を認めさせ、平和条約交渉に入る期待を明確にした。

 また、労働党大会取材のため平壌を訪れた外国人記者団に対し、平壌の中心部「未来科学者通り」や百貨店に案内して、経済制裁による混乱はないことをアピールし、経済制裁に屈することなく、核開発を継続する意思を示した

 北朝鮮は80年代半ば以降、短距離弾道ミサイル「スカッド」を生産配備、最新のスカッドERの射程は1000kmに達し、わが国の一部をその射程とすると見られている。90年代までには中距離弾道ミサイル「ノドン」の開発を行い、その射程1300kmはわが国のほぼ全域を射程内にしている。「テポドン」はノドンを一段目、スカッドを2段目に利用した液体燃料推進方式の長距離弾道ミサイルで最新の3段式ミサイルは射程が1万kmに達し、米本土を射程に入れる可能性があると言われている

 2月7日に発射されたテポドン「光明星4号」は、燃料の燃焼速度が速くなり出力が高まっており、人工衛星なるものを地球の周回軌道に乗せた。北朝鮮には未だ大気圏に再突入させる技術はないと言われているが、再突入時の耐熱保護材の安全性を検証する実験を行うなど、ミサイル技術の深化を進めている。

 北朝鮮はさらにミサイル脅威を多様化させる開発実験を進めている。

 その1は、衛星に探知されにくい、発射台付き車両で運用される移動式弾道ミサイル「ムスダン」である。6月22日にムスダンと見られるミサイル2発が発射された。これまでは発射後すぐに爆発し、失敗を繰り返してきたが、6月22日に行った2発目の発射は飛行距離400km、高度は1000kmを超えたと主張している。これが事実なら、発射高度を調整すれば日本に到達する可能性もあると言われている。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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