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元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

朴槿恵大統領は本当に告げ口外交をやめたのか?

──日韓国交正常化51周年で振り返る過去1年の総括

武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
【第7回】 2016年6月28日
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2015年11月の日中韓経済サミットの際にも、日韓首脳会議が行われた Photo:Yonhap/AFLO

 6月22日で日韓国交正常化から51年を迎えた。朴槿恵大統領の就任以来、日韓関係は困難を極めた。朴大統領は慰安婦問題の解決に拘って、日韓首脳会談を頑なに拒み続け、外国の首脳に会うたびに、安倍政権非難、日本非難を繰り返してきた。

 しかし、日韓国交正常化50周年の際、安倍総理と相手国大使館が開催した同記念レセプションに相互に出席したのを契機に、日韓関係は改善の方向に歩みだした。11月2日には日中韓首脳会談をソウルで開催した機会に日韓首脳会談に応じた。12月28日、年末の押し迫った日に慰安婦問題の解決に合意した。韓国政府は、北朝鮮の核実験・ミサイル発射とその後の中国の対応を契機に日米中との関係の全面的な見直しに取り掛かった。

 4月13日に行われた総選挙では与党セヌリ党は惨敗を喫し、朴槿恵大統領の求心力は低下した。反面、北朝鮮は36年ぶりに開催した朝鮮労働党大会において核保有宣言を行い、核の放棄はしないことを高らかに宣言した。このように、過去1年間は韓国やその周辺国を取り巻く関係の激動期であった。

 そこで今回は過去1年間を総括的に振り返りながら、現在の日韓関係を分析してみたい。

朴大統領の告げ口外交の失敗

 15年8月28日、朴大統領は中国の習近平国家主席が主催した抗日戦勝70周年記念式典に参加し、多くの独裁国家の首脳と並んで軍事パレードを参観した。そして帰国後、中国とは良い関係を構築できたので、これからは中国と北朝鮮との統一問題について話し合っていきたいとの所感を述べた。これに先立ち、習近平国家主席に首脳会談でハルピンに安重根の記念碑の設立を要望し、習主席は記念館の設立という要望以上の対応で応えている。

 中国は韓国との関係をそこまで良い関係と考え重視してきたのか。否。中国は東アジアで覇権を確立するために、米国の影響力を削ぐことを重視し、日米と韓国との離間を図ったのが安重根記念館である。また、北朝鮮の核実験、ミサイル発射後の中国の北朝鮮に対する優柔不断な対応を見れば、中国と北朝鮮の統一問題について話し合おうなどということは論外である。そうしたことを見抜けなかったところが韓国外交の弱さである。

 米国との関係においても、外交面の弱さが露呈している。安倍総理が米国を訪問し、議会で演説した際、日本の歴史認識についてきちんとした反省や謝罪を述べなかったにも拘わらず、評価の声が高かった。朴大統領は、米国は歴史問題について韓国の味方だと考えていた。しかし、米国は日米韓の協力が重要であるため、日本に対して過去の歴史認識で韓国と摩擦を起こさないよう日本に促していたことに気づかなかっただけである。集団的自衛権を受け入れ、日米同盟のガイドラインも改定して米国との関係を重視する安倍政権を米国が邪険にするはずがないことを朴政権は考えなかったのだろうか。

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武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」、「韓国の大誤算」(いずれも悟空出版)。


元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」

冷え込んだままの日韓関係。だが両国の国民は、互いの実像をよく知らないまま、悪感情を募らせているのが実態だ。今後どのような関係を築くにせよ、重要なのは冷静で客観的な視点である。韓国をよく知る筆者が、外交から政治、経済、社会まで、その内側を考察する。

「元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」」

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