去る5日、日本銀行が追加の金融緩和政策を決定した。ポイントは三つ。まず、金利操作の対象(政策金利)である無担保コール翌日物の誘導目標を、0.1%から0~0.1%に引き下げる。二つ目は、物価の安定が展望できるようになるまで、実質的なゼロ金利政策を継続すると表明。三点目は、5兆円規模の基金を設立し、国債だけでなくCP、社債、株式指数連動型投資信託(ETF)など、多様な金融資産を買い入るというもの。
これによって、とかく批判の的となっていた日銀は、景気後退懸念とデフレに対応するという姿勢を、より鮮明に打ち出した。その手法にはいわゆる非伝統的な金融政策も多く含まれている。これによって、持続的な物価の下落現象であるデフレは止まり、日本経済の閉塞感は払しょくされるのか。元日銀副総裁で現大和総研理事長の武藤敏郎氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンドオンライン客員論説委員、原英次郎)
――日銀が今回決定した金融緩和策を、どう評価していますか。
三点セットの包括的な金融緩和策を、タイミングよく打ち出したこと、特に資産購入基金という新しい仕組みを創設することを決定したことは高く評価したい。資産購入基金はこれから具体的内容を詰めることになるが、買入資産は国債、CP、社債に加え、ETFやJ-REIT(不動産投資信託)に及んでいる。また、その規模は5兆円程度とされているが今後増額する含みも残されており、かなりの効果が期待できるのではないか。
――これまで、デフレや円高を問題視する人たちが、日銀の政策を厳しく批判していました。
リーマンショック後のグローバル金融危機の中にあっても、日本の金融システムは比較的健全だった。ではなぜ、不況に陥ったかというと、問題は実体経済にあった。2003年~07年の景気回復は輸出が引っ張り、リーマンショック後の世界同時不況で輸出が減るとともに、不況に陥った。