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日本を元気にする経営学教室

「横展開」と「PDCA」で検証!
経営の基礎となる「言葉のあいまい性」の排除
神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第18回】 2010年10月12日
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 日本語は極めてハイコンテクストな言語である。「文字どおり」という言葉があるが、日本語では文字どおりでないことがたくさんある。このような言語特性があるため、俳句や短歌のような文学表現方法が高度に発展したといってよい。短い文章で世界を切るとることができるのは、一つ一つの言葉や文が、極めて多義的に理解できるからである。

 古池や 蛙飛びこむ 池の音 (芭蕉)

 という俳句にはいくつもの英訳がある。

The old pond-- a frog jumps in, sound of water.
An old silent pond... A frog jumps into the pond, splash! Silence again.
Antic pond-- frantic frog jumps in-- gigantic sound.

 どうだろう。芭蕉のオリジナルに対して、3種類の英訳がある。それぞれに、よい訳である。しかし、それぞれの英訳に描かれている世界はかなり違う。調べてみるとわかるが、この芭蕉の有名な俳句には、20以上の英訳が存在する。

 散文であれば、これでよいのだろう。しかし、ビジネスの世界で、一つ一つの言葉や文が、多義的に理解されることは望ましいとはいえない。その典型例が契約書である。契約者間で、契約書の内容について異なる解釈があれば、生じた係争の処理は、困難を極めることになるだろう。それゆえに、極めてハイコンテクストな日本語を使用していても、契約書の内容は100名が読んでも、同じ理解が得られるように作成されている。

 日本語のこの特性について正しく理解しておかないと、ビジネスの世界で大きな問題が生じる。というよりも、問題が生じているにもかかわらず、だれもが自分が理解しているように、他者も理解しているに違いないと思い込んでいるので、時間が相当に経過してから、多義的な理解(指示した人から見れば、他者による誤解)が生み出した深刻な事態に、愕然とすることになる。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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