ブリーダーの質にも大きなばらつき
法制化されたのに進展しない事例も

「悪徳ブリーダーだけの問題ではないですよ」

『犬の遺伝病研究会』の山根義久理事長。動物保護・譲渡活動等を行う施設『人と動物の未来センター・アミティエ(鳥取県動物愛護センター)』や動物病院の理事長も務め、動物愛護の啓蒙に尽力している。

 かつて日本獣医師会会長を務め、現在は2015年3月に発足した一般社団法人『犬の遺伝病研究会』の理事長をしている山根義久氏は話しだした。

「ドイツでは遺伝子をチェックし、子孫に高い確率で病気が発現しそうな、繁殖に向かない個体については、繁殖禁止です。日本はチェックをせず、人気の犬種を無制限に繁殖させています」

 日本のブリーダーは大概個人で、専門の教育機関もなく、誰でも簡単になることができるため、ドイツやイギリスのような動物愛護先進国と比べ、ブリーダーの質にはばらつきがあり、遺伝病や繁殖に対する知識も低い場合が多いという。

「動物愛護の点では、日本はとんでもない後進国ですよ。でもね、資金力が乏しいブリーダーたちに、責任を全部負わせるのは酷な話です。医学的な研究も進んでいない分野ですから。獣医師でも、遺伝病のことはあまり分かっていない」

驚くことに、法制化されたにもかかわらず、まったく進展していない事例もある。平成14年10月に施行された『身体障碍者補助犬法』だ。

「同法では、補助犬となる犬の遺伝病の診断についても、付帯事項で検討を進めることになっていましたが、進展していません。補助犬(特に盲導犬)を増やそうと取り組みを始めたのはいいが、育成期間が終了した後で、股関節形成不全、進行性網膜萎縮、特発性癩癇といった遺伝病が発症し、そこまでに費やした2年前後の歳月と200万円あまりの経費がふいになってしまう事態が考えられます。

 現状として、候補犬を選択する段階でこれら遺伝病に対する適切なスクリーニング検査が行われていないこと、さらに候補犬選択が行われる年齢では確定診断できない疾患があることなどが問題です」

 普通、「リスクの高い繁殖」と聞けば、「血が濃い」関係での近親交配が思い当たる。

ならば、悪徳ブリーダーを指導して近親交配を禁止し、徹底させればいい?
 あるいは、遺伝病を持つペットを販売しないよう、不届きなペットショップに対し、徹底した健康診断を義務付ければいいのか?