いまや子どもの数より多いペット。家族の一員となり、飼い主は惜しみない愛情を注ぐ。一方、市場の拡大をにらむ企業も次々と参入するが、ペットにまつわるおカネには相場がなく不透明。かかる費用から、ペットとの付き合い方に至るまでをみてみよう。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久、津本朋子、脇田まや)

サプリからイヌの“幼稚園”まで
ペットサービスの最新事情

 少子化が危ぶまれる日本だが、ペットの数は安定的に推移している。それに伴い、愛犬・愛猫のための人間顔負けのサービスも生まれている。ペット業界の最新動向をお届けする。

「ここに通いだしてから、本当にお行儀がよくなったわね~」

 還暦を迎えたばかりの水上晴美(仮名)さんは、乗りつけたドイツ車の後部座席に向かって、赤子をあやすような声で話しかけた。

 といっても、相手は人間の赤ちゃんではない。いとしいまなざしを向けるのは、もうすぐ2歳になるイヌのシュナイザーのジェリー君だ。水上さんは1年ほど前から、愛犬のジェリー君をイヌの“幼稚園”へ通わせている。

 閑静な住宅街が広がる東京・広尾。その一角に、アニマルプラザが運営する「犬のようちえん」がある。

 コンセプトは、昼間、飼い主が仕事などで家を留守にしている間に預かり、プロのドッグトレーナーがしつけをしてくれるというもの。「おすわり」「ふせ」「まて」などの基本的なしつけから、細かい食事のアドバイスまで、一匹一匹の性格や成長に合わせて、担当のトレーナーがきめ細やかな指導を行っている。

 毎日の通園が基本だが、忙しい飼い主にはスクールバスでの“送迎サービス”が人気。土地柄か有名芸能人の愛犬も通う、“セレブ”なしつけ教室だ。

 気になる料金は、体の大きさと希望の通園回数にもよるが、入園料が3万1500円、小型犬で48回通うコースが、37万4220円というから、決して安くはない。

 それでも「子犬の大事な時期にしっかりしたしつけを身につけさせたい」という飼い主が急増、毎日約40匹の子犬が“通園”している。中には飼う前から、問い合わせの電話をかけてくる熱心な飼い主もいるというほどの人気ぶりだ。

 水上さんは、「同じ年齢の子たちと触れ合うことでちゃんと“社会化”が図れるようになっている」と話し、「この子の幸せが、私たち家族の幸せ」と、目を細める。