大量のデータの収集と分析によって顧客を知る。マーケティング分野でのビッグデータの活用に注目が集まっているが、派手さはなくとも、データ解析を確実にビジネスに生かす事例は多い。そんな企業や組織の取組みに学ぼう。(事例は2013年3月時点のものです)

「この10年で、ウェブサービスやEC(電子商取引)の事業者は、どのユーザーがどのページから来て、どういう行動をしたかをかなり追跡・分析できるようになってきた」

 そう語るのは、オンラインマーケティングに詳しいアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦代表だ。「顧客の心理を覗けるようなもので、これこそまさに経営者が知りたかった情報。今までは経験や勘でわかったつもりになっていたことが、データでわかるようになっている。一方、マスマーケティングをやっている大企業、特にメーカーは恐ろしいくらいデータを見ていないし、そもそも顧客データを持っていない。この点では、二極化が進んでいる」。

 「顧客を知る」というビジネスの基本を突き詰める点で、オンライン、オフラインを問わず、小売りやサービスの現場ではデータ分析のニーズが高まっている。そして、データ活用に関して意識が高いか低いかということは、企業の命運を分ける重大事項となっている。

 当然だ。漠然とした「大衆」に、経験や勘という曖昧な根拠で対峙していくのに対し、顧客一人ひとりの消費行動についてのデータを分析し、個人ごとの興味・嗜好まで把握した上で、未来の消費行動まで予測したり、好みの商品に誘導することができるなら、怖いものなしである。

 それ故に昨今、ビッグデータという言葉に注目が集まり、それをマーケティングのキーテクノロジーとして活用しようという動きが高まっているのである。もっとも、いまのところは流行に乗っただけで、さしたる成果を出せていないケースが多いのも実態だ。

 データ分析においては統計学の手法は不可欠である。ここでは、そうした統計学の考え方を、確実にビジネスに生かしている例を紹介する。