おすすめポイント
統計学という言葉に普段から慣れ親しんでいる読者は少ないかもしれない。しかし私たちは、日常生活のあらゆる場面で、統計や確率に接している。著者によれば確率論の始まりは、16世紀のイタリアで、「数学的に、ギャンブルに勝てる方法はないのか?」を検討し始めたことであるという。一方、統計学の基礎は、17世紀のイギリス人商人が、伝染病が蔓延する社会背景の中で、死亡統計表から「36%の子どもは6歳までに死ぬ」ということを発見したことに始まる。こうした成り立ちから、確率論と統計学は必勝法や法則発見のための学問であるといえる。
数字を使って言語化することは、課題における因果関係を明確にすることはもちろん、他者に対して説明する際にも役立つ。確率・統計は「この怪しい民間療法は本当に効くのか」「このワインは将来的にどれくらい価格が上がるか」といった、「解決したい何らかの謎」をきっかけとしている。これを著者は「数字を使ったリアル謎解き」と表現する。本書はあらゆる日常の「謎解き」をするように、ギャンブルではどのような原則が働くか、あるいは因果関係があることを説明するにはどういった数字が必要かなど、具体的な事例について図やグラフなどを用いながら解説されている。
著者は自身を「大の数学アレルギー」と称しており、今でも数学の専門書には眠気をさそわれるのだという。だからこそ、本書は数字を扱っていながら、数字嫌いにも直感的にわかりやすい説明で、数字を「どう見るか」に焦点が当てられている。数学が苦手でも、数字を「読める」ようになりたいという読者は、必読である。(菅谷真帆子)