ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
週末はこれを読め! from HONZ

さかなクンに学ぶ「夢中」で居続ける苦しさと楽しさ

『さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生!』

村上 浩 [HONZ]
【第10回】 2016年8月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

夢中になる度合いが
人並み外れていた

 ハコフグ帽子と白衣のいでたちに、甲高い声と大きなジェスチャーで魚の素晴らしさを伝え続けるさかなクンの自叙伝だ。

 絶滅したと思われていたクニマス発見の偉業は天皇陛下にも言及され、東京海洋大学の客員准教授を務めるまでになったさかなクンの人生が、さかなクンの手によるかわいい魚のイラストとともに語られる。本文の漢字にはルビがついており、小さな子供でも楽しみながら読み通すことができる。もちろん、大人も飽きさせない。

 本書には、本当に何かを好きになることの苦しさ、そして、それ以上の楽しさが凝縮されているのだ。

 どんな困難を前にしても、さかなクンは夢中であることをやめない。魚との毎日をとことん楽しむさかなクンの生き方に触れると、この世界が喜びに満ちたものに思えてくる。何かを好きだった熱い気持ち、最後まで全力を尽くせずに投げ出したもの、さかなクンのように生きられなかった自分が省みられて、心が揺さぶられる。ページをめくるたび、色々な感情がかきたてられる。

 さかなクンは生まれた瞬間からさかなクンだったわけではない。ハイハイを覚える前にお絵描きにのめり込んだ。この頃はトラック、妖怪と興味の対象をどんどんと変えながらも、夢中になる度合いは当時から人並み外れていたという。小学2年生の時に同級生がたまたま書いたタコの落書きに衝撃を受けて、さかなクンの道へと突き進んでいく。

 タコに夢中なさかなクンは、魚屋で実物のタコを観察し、図書館や書店でタコに関する情報に可能な限り触れ続けていた。もちろん、暇をみつけてはタコの絵を描き、水族館に通い詰め、夕食は母親にねだって毎日タコ料理。さかなクンのタコに対する溢れんばかりの愛情は、自然と皆の知るところとなり、周囲の人間関に変化をもたらすこととなる。

 あるとき、乱暴者の幼馴染の少年がさかなクンに近づいてきた。「小突かれる!」とさかなクンが身構えたそのとき、幼馴染は祖父がタコ獲り名人であることを伝え、いっしょにタコ獲りに行こうと誘ってきた。この幼馴染は、タコのことを熱く語るさかなクンを見て、ついタコに興味を持ったのだろう。魚のことばかり喋るさかなクンをバカにしていたその他の同級生たちも次第に、「そんなに魚って面白いのかよ!?」と寄ってきたという。さかなクンにはこんな調子で仲間が増えていく。夢中に突き進む姿は、人を強く惹きつける。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

村上 浩 [HONZ]

1982年広島県府中市生まれ。京都大学大学院工学研究科を修了後、大手印刷会社、コンサルティングファームを経て、現在は外資系素材メーカーに勤務。学生時代から科学読み物には目がないが、HONZ参加以来読書ジャンルは際限なく拡大中。米国HONZ、もしくはシアトルHONZの設立が今後の目標。

 


週末はこれを読め! from HONZ

読むに値する「おすすめ本」を紹介するサイト「HONZ」から、週末読書にオススメのノンフィクション本のレビューをお届けします。HONZが対象とするのは小説を除くすべての本です。サイエンス、歴史、社会、経済、医学、教育、美術、ビジネスなどあらゆる分野の著作が対象です。

「週末はこれを読め! from HONZ」

⇒バックナンバー一覧