先週のニューヨーク(NY)タイムズに、日本に関するショッキングな記事が出ていました。「The Great Deflation:Japan Goes From Dynamic to Disheartened(長いデフレ:日本のダイナミックから落胆への転落)」というタイトルの記事なのですが、この記事を元に、デフレのもたらす問題について考えてみたいと思います。

デフレによる社会の劣化

 この記事では、長引くデフレが日本の経済面のみならず社会面にも悪影響を及ぼしているという事実が客観的に書かれています。非常に長い記事なのですが、正鵠を射ていると思うので、以下に記事の要点だけあげます。

●1980年代の日本はアジアを代表する国だったのに、今や低成長とデフレに喘いでいる。20年で経済状況がここまで悪化してしまった国は、近年では日本しかない。

●過剰債務の解消に苦しむ米国も日本と同じ途を辿るのだろうか。多くのエコノミストは否定的だが、デフレの罠にはまって“日本化”(Japanification)してしまう危険性を指摘する声もある。

●デフレは日本人に悲観論、運命論、将来期待の低下といった文化を刷り込んでしまった。最大のインパクトは自信の喪失である。20年前のような野心はなくなり、疲労、将来不安、重苦しいあきらめの雰囲気が充満している。

●昨年の政権交代など、日本もようやく危機に目覚めつつあるが、手遅れかもしれない。良い時代を知らず、仕事の安定や生活水準の向上といった、かつては当たり前だった価値観をあきらめた若者世代を作り出してしまったからである。生活水準が徐々に低下する中で、若者の間では倹約が当たり前となり、若い男子は草食動物と言われたりもする。

●世界が日本から学ぶべき教訓は、デフレが長引くと、かつて繁栄しダイナミックであった国も、深刻な社会的・文化的な退潮に陥るということである。今や日本人は将来に悲観し、リスクを取ることを恐れ、消費や投資にも後ろ向きになってしまった。

●デフレは資本主義経済に必要なリスクテイクの精神を破壊し、“創造的破壊”の代わりに“破壊的破壊”を台頭させてしまった。