前回、「スペンディング・ウエイブ(支出予測の波)」が経済のパフォーマンスに大きな影響を与えるとする考えを紹介した。

 人口構造の変化が経済活動に大きな影響を与えるとの議論は、日本でも以前から行なわれてきた。比較的最近では、内閣府の『平成17年度(2005年度)年次経済財政報告』が、第3章「人口の波と経済構造の変化」において、人口構造と経済変動の関係について論じている。

 基本的な結論はつぎのことだ。

 人口減少と団塊世代の定年退職という人口動態上の2つの大きな変化が2007年から始まる。団塊世代が高齢層に移行することにより、マクロの消費性向は、教養娯楽(家電・旅行等)等への支出を中心にして当面上昇する。

 より具体的には、つぎのような議論が行なわれている。

(1)家計貯蓄率は、2003年には8%程度だが、高齢化要因によって低下し、2010年頃には3%程度になる。

(2)高年齢層のリスクに対する許容度は他の年齢層より相対的に高いので、高齢化によってリスク資産需要が低下する可能性は低い。

(3)「団塊ジュニア世代」(1971-74年生まれ)は、30歳代後半に住宅取得のピークを迎える。他方、既存住宅の活用、特にリバース・モーゲージの広がりには課題がある。

(4)団塊世代が定年退職年齢に達することにより、企業の人件費は減少する。他方で、退職一時金や企業年金といった退職給付に関する負担には増加圧力が加わる。

(5)老人医療費が経済成長以上に伸びると、将来の負担は増大する。

 この報告から5年たった現時点において、これらはどう評価されるだろうか? 以下、各項目について見ることとしよう。