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日本に巣食う「学歴病」の正体

高学歴者は大企業に入るとなぜ「考える力」を奪われるのか?

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第31回】 2016年8月16日
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高学歴者なのに会社に就職すると「考える力」を失ってしまう人々とは

 今回は、企業に対して社員研修、講演、ビジネスセミナーなどを行う「株式会社新規開拓」の副社長・我満一成氏や、管理部長の阿部由里氏に取材を試みた。企業の、特に新卒採用と学歴の関係について話を聞いたが、その際のやりとりを紹介したい。

 テーマは、「考える力」。仕事をする際に問題点や課題を見つけ、解決策を考え、実行に移していく力である。2人は、大企業はこうした力があるはずの社員を大量に採用していながら、入社後彼らを開花させるために、十分な教育訓練をしていないのではいかと見る。豊富な経験がある2人の目に映る「企業内の学歴」の意味を、ホンネで語ってもらった。


考える力がある人が
いい仕事をしているとは言えない

筆者 お2人は、人材の採用や育成などのコンサルティングに長年、携わっておられるようですが、企業は採用時に依然として学歴を重視していると思われますか。

我満 少なくとも、大企業などでは、特に新卒時にその傾向はあると思います。学歴だけで判断しているとは思えませんが、判断材料の1つにはしているはずです。

阿部 私も大企業にしろ中小企業にしろ、新卒の採用については学歴を判断材料の1つにはしていると思います。当社も採用時にエントリーシートなどで学歴は確認します。面接などでやりとりをすると、学歴が高いと思える人は物事を深く考えているという印象は受けます。

筆者 その「考える」ということを、今回はテーマとしてお聞きしたいのです。私の経験を言うと、学歴が高いとは言い難いと思える人を取材すると、会話をすることが苦しくなることがあるのです。

 たとえば、「こういう質問に、なぜこんなことを答えるのだろうか」「なぜ、話の論理が滅茶苦茶になっていることに気がつかないのだろう」といった疑問が次々と湧いてきます。学歴の高い人と比べると、こちらの話を理解する力や考える力が、弱いように思えるのです。

我満 確かに、考える力は大切です。企業の採用を「考える力」という観点から見ると、まず私は、大卒にしろ、高卒にしろ、新卒の場合は採用する側がその人の学歴を確認したほうがいいと思います。学歴を身につけたということは、その時点まで一定の努力をしたということが言えるはずです。そのことは、採用する側として評価をすべきと思います。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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