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ヒット商品開発の舞台裏

カルビー、にんべんのアンテナショップが成功した理由

夏目幸明 [ジャーナリスト]
【第15回】 2016年8月17日
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顧客が自社の商品やサービスへの理解を深め、商品を購入し、時には企業情報をSNSで拡散してくれる。そんな都合がいい話が…現実にあるのが「アンテナショップ」ビジネスだ。話題のアンテナショップを取材すると、いくつか「人気の法則」が見えてきた。(取材・文/ジャーナリスト 夏目幸明)

ポケモンGOと横浜ベイスターズ
人気の共通点は!?

 近年、企業と消費者のコミュニケーションが変わりつつある。以前は広告やWEBでの「情報」伝達が主だったが、現在は「体験」をプロデュースする時代なのだ。

にんべんのアンテナショップ『日本橋だし場(NIHONBASHI DASHI BAR)』。おだしは1杯100円。「本物のだしの味」だけでの勝負は社内でも議論になったというが、蓋を開けてみれば、長蛇の列ができるヒットとなった

 単なる「情報」は価値を失いつつある。例えば音楽業界では、YoutubeやiTunesによりCDの価値が下がり、ライブや握手会などの「体験」が新たな収入源になった。

 スポーツも同様で、近年急激に観客動員数を増やしている横浜ベイスターズはその好例と言っていい。同チームの試合は、無料ネット動画で楽しめる。しかしファンは、スタジアムのグルメやイベント、人気選手が登場した時に一斉にジャンプする一体感ある応援などを楽しみに球場へ足を運ぶ。爆発的流行を見せた『ポケモンGO』も「体験型」だからこその人気なのかもしれない。

 企業と顧客のコミュニケーションも同じで、既に数多くの企業が「情報コミュニケーション」から「体験型コミュニケーション」への変化を巧みに取り入れている。

 そのひとつが「アンテナショップビジネス」だ。有名どころは、体重計・体脂肪計で知られるタニタの『タニタ食堂』。書籍で社員食堂のヘルシーメニューが話題になると、同社は全国にタニタ食堂を展開。顧客に“満腹になるのに、たった500kcal”を体験してもらい、爆発的な知名度アップを果たした。

 また、『日清カップヌードルミュージアム』も好例だ。顧客自身がデザインしたカップに、好きなスープ・具材を入れ、オリジナルのカップヌードルを作ることができる。しかも顧客は創業者・安藤百福の人生を追体験できる。企業の立場で考えれば、こんなに素晴らしいコミュニケーションはない。

 ただし、すべてがうまくいくとは限らない。例えば、各自治体が東京に出店するアンテナショップのなかには、苦戦を強いられている店も多い。

 では、人気施設と、そうでない施設の違いは何なのか?

 筆者が最初に取材したのは、創業300年を誇る鰹節の老舗『にんべん』が展開する『日本橋だし場』。同社の高津克幸社長が出店の経緯を語る。

 「きっかけは日本橋の再開発でした。元々、贈答用の鰹節を販売していた店を、しばらく別の場所へ移すことになったんです。そこで、飲食店を併設しようと考えました。かつぶしめしや汁物を出し、鰹節やだしのおいしさを味わえる店です」

 しかし高津社長は、単なる飲食店のレベルを超えて、「本物のだしの味や香りをもっと知ってもらえる店舗にできないか」と考えた。なぜなら、鰹節の奥深さはあまりに理解されていなかったからだ。

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夏目幸明[ジャーナリスト]

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店に入社。その後、雑誌記者に。小学館「DIME」の『ヒット商品開発秘話 UN.DON.COM』や講談社「週刊現代」の『社長の風景』などを連載中。著書に『大停電(ブラックアウト)を回避せよ!』(PHP研究所)などがある。


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