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ニッポン 食の遺餐探訪

日本人が意外と知らない「かつお節」に海外が熱視線

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第44回】 2016年7月6日
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新丸正の「駿河ふぶき」をかけた豆腐

 朝から降っていた雨があがり、焼津港には心地よい潮風が吹いていた。大型のまき網船から水揚げされた凍ったかつおが大きな音を立てて、陸に上がっていく。焼津港はかつおの水揚げ量、日本一。水揚げされたかつおは和食に欠かせないかつお節の原料になる。

 日本人とかつお節の関わりは長く、深い。弥生時代、古代人はかつおを干した堅魚を煮出し、調味料として使っていた。1300年前には伊豆や志摩、駿河などでカツオ漁が盛んになり、堅魚、煮堅魚は税金として収められていた。

 室町時代に焙乾という技術が導入されかつお節の原型ができあがる。1489年に書かれた「四条流包丁書」のなかにすでに「花鰹」の文字があり、これはかつお節を削ったものと考えられる。江戸時代初期には紀州で作られた「熊野節」が大阪を中心に人気を集めた。その後、「土佐節」や「伊豆節」「薩摩節」などが、それぞれの土地でつくられる。そして、明治30年ごろ、焼津で土佐節と伊豆節の長所を取り入れ、徹底した焙乾とカビ付けする本枯節の製法が確立した。現在、日本のかつお節は鹿児島の指宿と枕崎、そして焼津が、国内生産量の99%以上を担っている。

 今回はそんなかつお節にとって重要な場所である焼津にあるかつお節屋、株式会社新丸正を訪れた。

製造から商品化まで一貫生産
「せんべい」「ポテトチップス」まで手掛ける

焼津発かつお節ポテトチップスは最近の注目商品。後入れの削り節はポテトチップスとの相性やシェイクした時の混ざり方を考え、専用に開発したもの

 あまり知られていないことだが、かつお節業界はかつお節をつくる〈かつお節製造〉と削り節を製造する〈削節製造〉がそれぞれ分かれており、例えばかつお節で有名な日本橋の老舗にんべんは〈削節製造〉の会社で、原料のかつお節自体は協力工場から調達している。

 株式会社新丸正は製造から商品化まで一貫して行っている珍しいメーカーだ。「焼津かつおせんべい」やテレビ番組でも紹介された「新丸正 焼津発 かつお節ポテトチップス」などユニークな商品も手がける他、海外の食品展示会で積極的にかつお節の製品を出品し、好評を得ている。

 常務執行役員の柴田一範氏からお話を伺った。

──製造から商品まで一貫して行っている会社は珍しいと思うのですが。

 「そうですね。かつお節業界は〈作り手は作り手〉〈削り手は削り手〉という具合に分業が進んでいますが、当社は一通りなんでもできます。元々、当社は現久野社長の祖父が削り節メーカー、かつお節問屋として始めかつお節製造も自社でおこなうようになりました。かつおパックがない時代はその日に使う分をご家庭で削っていましたが、にんべんさんが開発されたかつおパックで昭和40年代末に家庭でかつお節を削る習慣がなくなり、パック詰めの需要が高まります。そうしたなかで開発した自社商品が『駿河ふぶき』です」

 削り節『駿河ふぶき』は厚めに削られた本枯節のホロホロとした口当たりが特徴の削り節で、同社の象徴的な商品だという。削り節から原材料であるかつお節の製造も手掛けるようになる。いわば川下から川上へと事業を拡大してきた珍しいケースだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

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