効果的な「叱り」を実践するために、「怒り」と「叱り」について、もう少し理解を深めておきましょう。

 「怒り」と「叱り」の違いは、簡単にいうと「反応(reaction)」と「対応(response)」との違いということができます。責任ある立場にある管理職は、自分の部署全体の成果が望ましい方向に向かうように、あるいは部下が生き生きとして部下自身の目標に向けて進んでいけるように「対応」することが大切です。

 そのためには、責任感(responsibility)のある行動が必要になります。ただ単に反応するだけでは、売り言葉に買い言葉、感情的で短絡的な反応になってしまうものです。あくまでも、反応するのではなく、対応することが重要です。

怒り=reaction(反応) ……感情的・短絡的
叱り=response(対応)……理性的・戦略的

 また、「怒り」と「叱り」の関連性を分かりやすく表現すると、右の図1のようにあらわすことができます。

 部下が失敗したり、上司の意図どおりに行動できなかったとき、つい部下のことを怒ってしまうこともあるはずです。

 人は誰でも「怒り」を持っています。しかし、その「怒り」は、単に部下に対する「怒り」だけではなく、自分自身に対する怒りや、目の前にいない人に対する怒りなどもありえます。それらが何らかの刺激によって、マグマの状態のまま噴出してしまうこともあります。当然、火山が噴火し、マグマが襲ってくれば、近くにいる人々に悪影響を及ぼしますし、人々は逃げ出してしまいます。