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一流の睡眠
【第8回】 2016年8月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
裴英洙 [医師・MBA/ハイズ株式会社代表取締役社長]

疲れをとって仕事の集中力を高める「ベスト睡眠時間」とは?

睡眠の悩みを解消するための情報は、これまでにも、さまざまなメディアでたくさん紹介されてきました。でも……。

・8時間眠りなさい
・できれば「22時」に眠りなさい
・規則正しく栄養管理の行き届いた食事を摂りなさい
・睡眠時間を確保することから1日をスケジューリングしなさい

「……いやいや、そんなの無理だから!」

そう思ったことはありませんか?

いわゆる「睡眠の常識」と、ビジネスパーソンの実態はかけ離れているのです。そこで本連載では、医師とビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。

第8回は、一般論でも、ほかの誰でもない、「あなただけのベスト睡眠時間」の見つけ方をお伝えします。

 人それぞれ、生活スタイルや仕事のハードさ、持っている悩みは異なります。また、眠る環境も、ベッドの硬さや枕の高さ、寝室の騒音、温度、湿度、誰と眠るかなどによって睡眠の量と質は大きく左右されます。つまり睡眠は、究極にカスタマイズされるべき生活習慣なのです。

 拙著『一流の睡眠』では、32の具体的な「快眠戦略」として、すぐに効果が出るメソッドを紹介していますが、「あなただけのベストな睡眠スタイル」は、自分自身で見つけるしかありません。

 そこで、自分だけの「正解」を発見するために有効なツールが「睡眠ログ」です。食べたものを日記として記録することで食行動を可視化し、正しい食生活へと導く「レコーディング・ダイエット」という方法をご存じかもしれません。同じように、というよりも睡眠習慣は食習慣以上に、一人ひとりの環境によって状況が異なるものです。だからこそ、睡眠を可視化することに大きな意味と効果があるのです。

 睡眠はその日の状態や季節などによっても大きく質が左右されますから、特徴を把握するためには、一定期間測定してから振り返るのが有効です。

 マネジメントの大家ピーター・ドラッカーは「重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである」と言いました。ビジネスも睡眠も、原因分析をせずに解決法の提案はありえません。まずは、ご自身の睡眠の問題がどこにあるのかということにアプローチしていきましょう。

あなただけの熟睡習慣を身につけよう

 

たった3日の睡眠ログで
「あなただけの問題」が明らかになる

 睡眠ログには、入眠時間、起床時間、そこから導き出される睡眠時間、睡眠効率、そして目覚め感、その日の仕事のパフォーマンスを記載します。

 目覚め感は、自分の主観でOKです。すぐれないと感じたら「×」。調子がいいなと思ったら「○」。ちょっとだるい程度なら「△」。その程度でOKです。続けることに意味がありますから、簡単にできることが一番重要です。1日3分もかからないでしょう。

 その横に、仕事と体調に関するコメントを添えておいてください。気づいたこと、ひと言だけで構いません。「寝不足、遅刻した」「足がむくんでいない、商談成立」「会議で眠くならなかった、快便」といった具合です。

 それだけで十分ですが、より詳細なデータを取りたい場合は、次の3つを軸にするとよいでしょう。

 (1)日中の眠気とだるさ
(頭がぼんやり、あくび、目が疲れる、全身がだるいなど)
 (2)集中力の低下度
(思考が回らない、根気がない、直前のことが思い出せないなど)
 (3)身体の疲労残存感
(肩こり、頭痛、腰痛、まぶたがぴくぴくするなど)

 次の表は、ある人の睡眠ログです。


 8時間30分眠った日は、日中にだるさが残っているようです。一方で、6時間15分の日は居眠りをしてしまい、7時間30分の日はパフォーマンスが良かったようです。

 もちろん、3日分のデータから確定的なことは言えませんが、こうしたデータをある程度の日数分ためていくと、ご自身の睡眠傾向がわかり、「7時間半くらいが自分のベストな睡眠時間なんだな」と「当たり」をつけやすくなります。

 運動の有無や食事の内容等、さらに詳細なデータを記録すればより精度が上がるでしょうが、記録することが億劫になるリスクも高くなります。最初は、簡単に書けて、傾向がわかるくらいの精度で十分です。ちなみに、『一流の睡眠』では、さらに睡眠習慣を見える化する方法を紹介していますので、興味のある方はご覧になってみてください。

「目覚め感」と「入眠時間」だけで
眠りが見えてくる

 さて、この睡眠ログをしばらく続けると、いろいろなことがわかってきます。

 たとえば、目覚め感が「×」の日が3日続いたとしましょう。そこで、3日間の睡眠効率と入眠時間をチェックしておきます。その3日間と、目覚め感が「○」だった時の睡眠効率と入眠時間を比較してみます。それだけで、自分のベストな入眠時間がある程度わかるはずです。

 そのデータを元に、「○時に寝るのがいいのかも!」と、仮説検証ができるのです。それを繰り返せば、確実にあなただけの「ベスト睡眠時間」に近づいていきます。

「体調を崩さないギリギリの睡眠時間」を押さえる

 少しでもやってみるとわかるのですが、睡眠と仕事のパフォーマンスの関係性が見えてくると、俄然、睡眠への意識が高まります。見えなかったものがどんどん見えてくるので、単純に楽しいのです。

 さらに1ヵ月ほど睡眠ログをつけ続けると、自分はどれくらい睡眠を犠牲にできるのかも見えてきます。「これ以上睡眠を犠牲にするとパフォーマンスを落とす、または体調を崩す」という限界ラインがわかるようになります。

 また、平均睡眠時間と比較してどれくらい「睡眠負債」が溜まっているかが簡単にはじき出せるので、リアルタイムで翌日からの睡眠時間を考える有効なデータになるのです。もし、本格的な不眠症に悩まされ、専門医にかかる必要がある場合にも、この睡眠ログを持参することで、より適切な診断やアドバイス、治療法を受けやすくなります。

 とはいえ、「睡眠ログ」と言われただけで、億劫に感じる人もいるでしょう。とくに、時刻を記録する時、布団に入った時間は記録できても、意識が遠のいていく「入眠時間」を記録するのは難しいものですよね。

 そこで私は、「もう瞼を開けていられない」と思う瞬間の時間を時計で確認してから眠ります。そして翌朝目覚めた瞬間にその時刻を記録しています。幾分ズレるのは仕方ありません。あまり厳密になり過ぎなくてよいのです。 

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裴英洙 [医師・MBA/ハイズ株式会社代表取締役社長]

はい・えいしゅ/医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。

 

1972年奈良県生まれ。 金沢大学医学部卒業、金沢大学大学院医学研究科修了。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科(現・心肺・総合外科)に入局し、大学病院や基幹病院を中心に、主に胸部外科(肺がん、心臓病など)に従事し、日々手術に明け暮れる。その後、金沢大学大学院に入学し、外科病理学を専攻し医学博士を取得。さらに、病理専門医を取得し、市中病院にて病理医として病気の最終診断にかかわり、年間1万件以上の重大疾病の診断をこなす。

また、医師として働きつつ慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)にて医療政策・病院経営の第一人者の田中滋教授に師事。同ビジネス・スクールを首席で修了。フランスグランゼコールESSEC大学院交換留学。ビジネス・スクール在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。多数の医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザー業務などを行なっている。 現在も医師として臨床業務をこなしつつ、臨床の最前線からのニーズを医療機関経営に活かすハンズオン型支援を行なう。

著書に『10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術』『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』(ダイヤモンド社)、『医療職が部下を持ったら読む本』(日経BP社)などがある。

 


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