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イノベーション的発想を磨く

社内に自社の批判や反証“だけ”するチームを作る効用

情報工場
【第24回】 2016年8月20日
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視点が変わると、答えも変わる

 今年の春、ある企業の新人研修で話をする機会があった。その時、参加した新入社員たちに、こんなパズルを解いてもらった。

 「以下の数式は、ある規則に沿って並んでいる。?に当てはまる数字を答えなさい。
9=72、8=56、7=42、6=30、5=20、3=?」

 「答えがわかる人は手をあげてください」と言うと、何人かの手があがった。最前列に座っていた男子社員を当てると「6です」と答えた。

 「違う答えの人はいませんか?」とさらに聞くと、最後列の女子社員が手を挙げた。彼女は「9です」と答えた。

 そう、実はこのパズルには答えが二つあるのだ。

 答えを「6」と答えた男子社員に「彼女は答えが9だと言っているけれども、なぜだかわかりますか?」と尋ねると、少し考えた末に「わかりません」という答えが返ってきた。次に「9」と答えた女子社員に「6と言っている人がいますが、どうしてだかわかりますか?」と聞くと、狐につままれたような顔をしてただ首を振るだけだった。

 どうやら、人は答えを一つ見つけてしまうと、それ以外の答えを見つけづらくなるようだ。

『レッドチーム思考』
ミカ・ゼンコ著 関 美和訳
文藝春秋 380p 1900円(税別)

 このパズルの件を踏まえ、新人研修での私の話は「社会で仕事をしていると、こうしたことはよくある。自分の考えだけが正しいと思わずに、いろいろな人の意見を聞きなさい」という結論で締めくくった。しかし、これは新人だけではなく、自分も含めた社会人全員が常に心に留めておくべきことだと思う。

 二通りの考え方があり、どちらかが正しいと思い込んでしまったとしたら、どういうことが起こるだろう。上記のパズルの場合はどちらも正解なのでまだよい。だが、間違った考えに固執してしまうこともあるだろう。特に組織としてどのように行動するべきかを決めなくてはならない時に、1つの見方にこだわって判断すると、取り返しのつかない失敗につながることもある。どうすれば失敗を回避できるのだろうか。

 本書の著者のミカ・ゼンコ氏は国際安全保障と軍事戦略が専門で、アメリカの軍や諜報機関で採用された「レッドチーム」の手法が体系化され、それが民間企業にも広まっていることに注目した。

 レッドチームは、組織の多数派や上層部に対してあえて反対意見を述べる「悪魔の代弁者」の役割を担うことを目的につくられる。ゼンコ氏は、CIA長官から企業幹部、さらにはスーパーハッカーまで、200人以上のレッドチーム実践者へのインタビューを通して、さまざまな分野での事例を収拾。本書は、それらをもとにレッドチームの機能や、そこで使われている思考法についてまとめあげた書だ。

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浅羽登志也

情報工場シニアエディター。1989年、京都大学大学院修士課程修了後、リクルート入社。同社スーパーコンピュータ研究所にてインターネットに関する研究に従事。1992年、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に創業メンバーとして入社。インターネット黎明期からサービス開発・技術開発に携わる。IIJは、日本で最初にインターネット接続の商用サービスを開始したインターネットサービスプロバイダで2006年12月東証一部上場。1999年、IIJ取締役、2004年より2009年までIIJ取締役副社長。2008年より2015年までIIJイノベーションインスティテュート代表取締役社長。2015年7月よりIIJフェロー。情報編集にも興味を持ち、2007年より松岡正剛氏主催のイシス編集学校で松岡流編集術を学ぶ。現在イシス編集学校の師範を務める。2010年に軽井沢へ転居。自然農法で、自家用の蕎麦や大豆を栽培中。

 


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