年金財政の持続性を理由に出てきた
ドイツ連銀の69歳定年論
ドイツ連銀が、将来的に、法定定年を69歳まで延長すべきだと提言して話題になっている。
ドイツ連銀は、公的年金財政の長期的持続性のために定年延長が必要だとの理由を挙げているが、高齢者は投票率が高いこともあって、「年金」は政治に大きく影響する話題だ。ドイツでも、政治家は連銀の提言を批判している。
日本はドイツよりもさらに平均寿命が長い国なのだから、たとえば年金の支給開始年齢は、ドイツよりももっと高くていいはずだ。もともと、保険としての年金は「結果的に予想以上に長寿となった少数の人」の生活費を、多数の加入者達が共同で支える仕組みに本質があるので、年金の受け取り始めはもっと高齢でもいいはずだ。
仮に、ゼロから社会保障制度を作っていいならば、社会的な制度設計としては、長生きリスクのために今よりももっと高齢から支給される公的年金と、自助努力のための制度との両方でバランスを取るのがスマートだろう。支給開始年齢を引き上げた公的年金は、保険料も積立金も、現状よりは大幅にスリムなものになる。
また、安倍政権は、日本の成長率を底上げするための施策、いわゆる「成長戦略」の一部として、高齢者の労働参加を挙げているのだから、公的年金にあっては年金支給開始年齢引き上げ、そして、雇用にあっては定年の引き上げは、自然な政策だと思われる。
ただし、公的年金支給額の実質的な削減が、有権者の抵抗を誘発しやすい問題であることは、日本でも、基本的には諸外国と同じなので、年金制度のリフォームは簡単ではない。
定年制度は年齢による差別
本来は定年廃止が「正義」
さて、年金の支給開始年齢と企業のいわゆる「定年」とは内容が全く同じな訳ではないが、「年齢」を判断基準としてお金が払われたり、雇用が打ち切られたりする点は同じだし、もちろん、制度として両者には関連がある。多くの人にとって、定年と年金支給開始の間に無収入な空白期間ができると辛い。
さて、どうするのが正しいか、という「正義」と「狭義の経済合理性」の観点からの理想論で答えを出すとするなら、企業の「定年」は、廃止するのが正しいだろう。